君を隠したあの夏

恋愛(学園)

ゆのか/著
君を隠したあの夏
作品番号
1763512
最終更新
2025/10/23
総文字数
12,961
ページ数
10ページ
ステータス
未完結
PV数
51
いいね数
0
あの夏を、私はまだ覚えている。
 「暇だからいいよ」──そう答えたあの日。
 中学1年の七月、青郎に告白されて、軽い気持ちでうなずいた。
 でも本当は、あの瞬間から何かが変わっていたんだと思う。
 青郎は、誰よりも明るくて、クラスの中心にいた。
 私はその光が少しまぶしくて、だから決めた。
 「この関係、誰にも言わない。隠すためなら、なんでもする」って。
 秘密であることが、ふたりだけの絆のように思えた。
 放課後の体育館裏、机の下でつないだ手、誰にも気づかれないように笑い合った日々。
 どんなに隠しても、心の奥では、あの人だけでいっぱいだった。
 2年の春、初めて「好き」と伝えた。
 青郎は驚いたように笑って、そっと私の頭を撫でた。
 あの瞬間、初めて“恋”が本物になった気がした。
 冬、席が隣になってからは、毎日のように机の下で手を繋いでいた。
 3年の春、修学旅行でバレないように手を繋いで、あーんして。
 周りに隠しながら、心の中では「ずっと一緒にいられますように」と願っていた。
 でも、冬。受験の時期。
 青郎が遠い高校に進むと聞いた夜、涙が止まらなかった。
 だけど、「青郎の夢を応援したい」と思った。
 理科の授業中、先生にバレないように彼の面接練習をしていた日々は、
 恋人としての最後の時間のようだった。
 高校生になってからも、好きだった。
 でも、遠距離は想像以上に冷たくて、痛かった。
 七月七日──あの日、青郎は言った。
 「お互いを思って、ここで終わりにしよう」
 そして、約束をした。
 「成人式でまた会おう。その時まだ好きだったら、今度は結婚前提で付き合おう」
 時が経っても、青郎以外に“好き”と思える人はいなかった。
 そして、青郎もまた、誰かと付き合っても、私を忘れられなかった。
 あの夏、隠した恋は、今も胸の奥に息づいている。
 誰にも見せなかった恋が、確かにここにあった。
 ──これは、時間を越えて続いた“初恋”の物語。
あらすじ
中学1年の夏、青郎に告白された由埜華は、軽い気持ちで受け入れる。誰にも言えない秘密の恋は、手を繋ぐ放課後や修学旅行の甘い時間に胸を揺らし、日々を彩った。遠距離や別れを経ても互いへの想いは消えず、成人式で再会した二人は、初恋の切なさと温もりを抱きしめ、未来への一歩を踏み出す――時を越える青春純愛物語。

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