櫻いいよさんのレビュー一覧
とにかくかわいい。 この一言に尽きる。 方言で言い合う二人がとてもかわいくてたまらない。もっともっと、もページをめくってしまう。 素直すぎる彼女は、先輩の言葉を素直に受け止めて努力した。 素直じゃない彼はただそばで不機嫌ながらも居続けた。 ほんとはね、と。 彼女にこっそり不機嫌な理由を教えてあげたくなりました。 田舎から出てきた二人が、この先都会に揉まれてあかぬてても、今と変わらぬ雰囲気を持ち続けてくれたらいいなと思います。
そろそろ結婚を考える年齢。けれど付き合って10年になる彼氏は自由奔放に過ごしている。 好きだけでこれ以上歳を重ね続けることができるほど強くはない。すきだからこそ、それだけじゃダメだと思い知らされる。 いつまでこのままなのか。いつまでこうして続けるつもりなのか。 そんな不安に追い打ちをかけるような事件。 逃げ出して、振り切って、現実に目を向ける。だけど、そんなことが簡単にできるならば10年も付き合っていない。10年という時間と愛情はそう簡単に忘れられない。 私も10年付き合い結婚したので、当時の自分を思い出しました。 何も変わってないかもしれない。何も変わらないかもしれない。 だけど、前よりも少し明るくなったであろう彼女の笑顔が目に浮かぶようでした。 恋に悩む、結婚に不安を抱く、もしくは当時の気持ちを思い出したい方々に、ぜひ。
とある紅茶専門店で働く彼。 そしてその店の胡桃さん。 クリスマスイブには色んな人がいる。 幸せに酔いしれる人も。友達と楽しむ人も。そして、不安でいっぱいの人も。 暖かい店でそっと差し出されるのは、ミルクたっぷりの特別メニュー。 体も心も暖かくしてくれて、そして……。 幸せをくばる素敵なトナカイのような胡桃さんに、読んでいて私も幸せにしてもらいました。 ほのぼのとして、心の暖かくなるクリスマスイブに浸らせてもらいました。 こんなクリスマスも、素敵だなぁ。 もっとふたりと、そしてお客さんたちを覗いて見たくなりました。
秋の情景から始まる作品。 あまりにもキレイな描写に引き込まれました。 正直状況は違うものの、私も「私から言ってやるもんか!」と今、まさに思っていることがあり、親友の言葉に耳を塞ぎたい気分になりました……。 ワガママと、素直に言葉に出すこと。 似ているようで実は全く別物。 意地もあるけれどそれだけじゃないからこそ、なかなか簡単に口に出来なかったりする。 顔が見えないのなら、ふれ合えないのならなおさら。 だけど、「言わないこと」で相手にも自分と同じような不安を与えていることもあるのかもしれない、と思わせて貰いました。 たまには素直に。 思いをそのまま言葉にして、風のように相手に伝えることができれば。 金木犀の香る、少しもの悲しくなってしまいそうな秋も、心地よく穏やかに香りを楽しめるのかもしれない。 秋にピッタリの作品、是非、この時期にご一読を。
七つ年上のうのちゃん、お姉ちゃんが、離婚した。 十六歳の主人公は、始めて彼氏が出来て、始めて家に行って、始めて、キスをした。 ゆったりと過ごす時間。 お姉ちゃんとの会話、学校と、友達。そして、彼氏。 なんでもない会話や不安や不満が、少しずつつながっていく。 あぁ、こんな風に、わたしも、みんなも、考えてきたから、今があるんだ、と。 家族との関係。 他人との関係。 あげるもの、もらうもの、欲しいもの、あげたいもの。 それらがいつか、すべて、一本の線でつながる、そんな日が、そんな人が。 それが、お互いであれば、いいね。素敵だね。 きっと、誰もがどこかに抱く気持ちが詰まった、温かく、ちょっと切なくて、だけど幸せな作品でした。 是非、ご一読を。
付き合う前に、必ずとあることを確認する彼女。 だけど心のどこかで諦めていたのだろう。傷が深くなる前に、それならいっそ、と始めから線を引いていたのだろう。 だけど、彼は乗り越えてきた。 乗り越えて、抱きしめてくれた。 普通に、誰もが恋人にするように。 街中に溢れる恋人同士のように。 彼女と彼の、日々。 それは特別なようであり、何の変哲もない幸せな日々。 だけどその日々を過ごしているということが、この物語において何よりも大事なのだと思いました。 優しくて、とびっきりかわいい年下の彼。 そんな彼に心が溶かされていく主人公がとてもかわいらしかったです。 読後、あたたかく、そして病気のことや人と人の関係、そして自分の毎日、いろんな事を感じる事のできる作品でした。
高校生の晃と冬海。 ひとつ年下の彼の魅力に気がつけば目が離せなくなり、気がつけば、恋をしていた。 高校生の恋愛、とカンタンに言葉に出来ないストーリーに、気がつけばどっぷりとはまり込んで夢中で頁を捲りました。 不器用で不安定な思春期に、少し大きすぎる問題。だけどそれを“思春期”の彼らは真っ向に受け止め悩み、そして突き進む。 その中にあるたったひとつの、だけど恋をする上で、人と関わりを持つ上で一番大事なことがぶれない二人に、ただただ心から、幸せになって欲しいと願いました。 オトナになるとこんな風に受け止めるのは難しい。 私は彼女と彼を、羨ましいとすら思います。 不完全は、これから完全にすることが出来るかもしれない。 「私で消せばいい」 このセリフは、忘れられないと思います。 是非、ご一読を。
同居人が姿を消した。 そんな同居人宛の手紙を見てしまったことが、彼にとっての始まりだった。 そして同居人を尋ねてきた彼の妹であり、手紙の差出人である女の子との出会いが。 ゆっくりと進む話は、とても穏やかで、だけどどこか不安定でぎこちない。だからこそ、気になってそわそわして、頁を捲ってしまう。 独特の雰囲気を感じる作品でした。 だけど私はそれがすごく好きです。 頁数は少なくない。けれど、気がつけば最後の頁に辿り着いていた。彼と彼女と同じように作品を読んでいる間何かを探し彷徨って、そして、ふたりの辿り着いた場所に私もつれて行ってもらえたようです。 この作品を、書籍として手元に置いておきたいと、何で今ネットで読んでいるのだろうかと悔しく思う程でした。 多くの人に見つけてもらいたい作品でした。
たまたまほかの男とよった勢いでキスをした。 それを彼氏に見つかって、ただひたすら謝った。 “なにに?”“どうして?” 自分の気持ちも、人の気持ちも、わからない大学生の主人公。 彼女の口から語られる、過去。 家族との関係に、初めての恋。 そして、今。これから。 表紙に惹かれ頁をめくり始め、読み進めるうちにどうなるのだろうかと気になって一気に読んでしまいました。 さめた主人公の、少し遅い青春。そして、成長と、終わらない青春。 うまく言葉にできない。 だけどとても引き込まれました。 寂しくもあり、切なくもあり、未来への希望が残される輝くほどすてきなラスト。 ああ、こんな結末もいいなと、私までもが彼女の二十年後を楽しみに思いました。 (ベビーブルーの部分の表現、大好きです) この作品を読めてよかったと思います。 ありがとうございました。
とあるカップルの、とある一日。 結婚式当日 年下で、可愛くて、真っ直ぐで、子供なカズミと、しっかりもので、真面目なおなつ。 二人の記念日は思い通りにはいかなかった。想像していた結婚式とは違っていた。大変だし忙しいし、おまけに新郎は……。 素敵な言葉が散りばめられているわけじゃない。 どっちかといえばとても普通で、ちょっと特殊で、珍しくてかっこ悪いところだってある。だけど二人らしい。 おなつの思いがダイレクトに伝わって来て、後半は心を揺さぶられて、胸が苦しくて苦しくて仕方なかったです。 幸せなのに切ない。 だから、これからの日々を大切に出来るのかもしれない。 この二人が、このままのままで年を重ねていってくれますように。 おめでとうございました。 そして 素敵な一日を覗かせていただきありがとうございました。
一緒に過ごした高校生活。思い出にはいつも彼がいた。 些細な出来事から 季節の行事まで、 思い出にはいつも彼がそばに居て、いつも彼は笑っていた。 いつまでもこうしていたかった。いつまでもただそばに居て笑っていて欲しかった。 だけど、必ず訪れる別れ。別々の道へと進んでいく仲間。 だから、最後に。 一つだけ。 主人公の日々に、彼が常にいたことが、語られる思い出ですごく感じられます。 彼と過ごした学校生活。その全てに彼はいたのに。 だからこそ、胸が苦しいほど痛む卒業の日。 いつもと違う雰囲気に、“別れ”が身近になってしまう切なさ。 自分の学生生活を思いだし、ちょっぴり切なく、だけど懐かしくて嬉しくもなる、そんな作品でした。 是非、ご一読を。
なんて綺麗で、繊細な物語だろう。 読後、いえ読んでいる最中からそんな世界に囚われ、夢中になってページを捲りました。 画家としてひっそりと暮らす松葉杖の老人と、愛猫のびわ。二人の静かな世界に現れたのは、一人の少女。 花が咲き 花が枯れ 花が乱れ 彩られる庭 そして、明かされる思いと絆 繊細で美しい気持ちに、胸が熱くなりました。 劇的な展開のある作品ではありません。 ただ、ひたすら美しく、そして心に残りました。 目に見える世界は、ほら、こんなにも美しい。美しく彩ることができる。 たくさんの人に読んでもらいたいと、心から思います。
好きでもない男に、初めてを捧げた。 なくなった母が、貢いでいた男に。 全てを知るために、ありったけの勇気と覚悟で踏み出した。 真実を知るために好きでもない男と付き合い、そして謎を探っていく。 けれどその先に見えた物は……。 初めは主人公と同じように彼の本性はどうなんだろうと疑っていたのに、読み進めれば進めるほど、主人公と同じように「そんなことしそうにない」としか思えない。 そして余計に謎が気になって、最後まで読まずにはいれなくなりました。 ほんの小さなきっかけが、次のきっかけに繫がっていく。 知らないことは時に罪だけれど、2人は知らなかったから、この結末を迎える事が出来たのだろうと思います。 恋を受け入れていく主人公もとてもかわいらしかったです。 是非ご一読を。
「死にたい」 彼はそういつも口にする。 そんな言葉に、少女はいつも「またか」と思い聞きながす。 徐々にひも解かれる二人の「言葉」の奥の奥。 気持ちの奥底に眠る黒い感情。そして優しい気持ち。 二人は二人でいることで、自分をみて、自分を守ってきたのかもしれない。 ゆったりと心地よく進むにつれて、どんどんと気がつけば彼女たちの想いの中に入り込んでしまうようでした。 二人の関係、会話、その奥に秘められていた、必死な想いはとても痛々しく、だけどとても純粋。 空は毎日誰しもに同じように青空が覆うわけじゃないけれど。 もしかしたらずっとずっと、くすんでいるのかもしれないけれど。 それでも、すてきなのかもしれない。 それもきっと、きれい。 そんな風に思わせてくれます。 ぜひ、ご一読を。
楽しい時間はずーっと、ずーっと続いて欲しい。 きっと誰もが一度は願ったことがある想い。 夜は暗いから明るい方がいい 夜は会えないから昼間がいい 一緒にいると楽しいから、ずっと一緒にいたい ねえ、だけど。 本当に夜がなくなっちゃったら? ずっと一緒にいれるけど、ずっと一緒に遊べるけど。 だけど夜がなかったら? 淋しい時間を過ごしたら、きっと昨日よりも楽しい時間を過ごせる。 可愛くて だけどほろりと涙がこぼれてしまいそうな、そんな愛しいウサギのお話し。 是非、ご一読を。 眠るときに思い出したい絵本でした。
付き合って3年。 29歳の誕生日。 仕事ばかりの彼氏と、二ヶ月ぶりのデート。その日に彼女はとある決心をした。 なのに。 彼の急なドタキャンで大げんか。1人取り残されて、このままでいいのかと、そんな不安を抱いた時。 出会った1人の、おじいさん。 おじいさんの大切な思い出に触れて、自分の気持ちに気付かされる。 優しくて、温かいおじいさんの話は、読んでいてとても憧れました。 彼氏に怒りたくなる気持ちをぐっと堪えながら迎えたラストには、主人公と同じようににやりと笑ってしまいました。 女性って強い。 それって力じゃなくて、もしかしたら、思いとか、素直さとか、勇気とかからきているのかもな、なんて思ったり。 だけど、きっと。 だから、いつか。 約束を——。 女性にこそ、読んで欲しいと思えるとても温かく幸せでかわいい、そんな作品でした。