櫻いいよさんのレビュー一覧

★★★★★
2011/11/01 12:44
一瞬の、永遠

母を失い、父とふたりで過ごす藍火。 何事もない、平穏な毎日に、突然現れたのはくすんだ空と、4人の男女。 訳が分からないまま見知らぬ土地に連れてこられた彼女。そんな彼女に救いを求める4人。 それぞれの悩み。 それぞれの苦しみ。 それぞれの、思い。 ため込まないで、私がいるから。 1人じゃないから、傍にいるから。 怖がらないで、空はそこにあるから。 4人の思いは悲しいのに、だけどとても美しい。 藍火の真っ直ぐな思いはとてもキレイで、彼女こそが、彼らにとって、一瞬の、だけどとても素敵な日々だったのだろうと。 だからこそ、あの、一瞬が、彼らの希望に繫がったのだろうと。 結末にも心温まり、登場人物みんながとても愛おしく感じました。 頑張らなくていい、ただ少し、踏み込むだけで何かが変わって行くんだろう、そんな勇気をいただきました。 是非、ご一読を。

続きを見る
★★★★★
2011/10/24 03:27
繋がる事は美しい。

突然届いた、一通の手紙。メールがあふれるこの時代に、なんで手紙?そして差出人は、自分には縁がないだろうと思っていた、クラスのマドンナ。 二人の関係は、手紙のようにゆっくりと相手に届いて近づいていく。 確実に、まっすぐに、思いを乗せて。 二人は常に前をみてて、常に自分に正直で、読んでいてとても心が洗われるようでした。 終始ゆったりと言葉が紡がれ、劇的な展開なく、だけど確実に進んでいく時間。それが二人らしさを表しているようでした。 繋がることで得る幸せ。 繋がっていく未来。 毎日過ごしていく。毎日たくさんの事を感じながら。形として残るもの、残らないもの。それら全てが二人の宝物。 大切な人に、素直な気持ちで手紙を書いて、自分の気持ちを精一杯伝えたい、そう思える作品でした。 是非、ご一読を。

続きを見る
★★★★★
2011/10/17 10:37
ネタバレ
あなただけを見てる

レビューを見る
★★★★★
2011/10/17 02:31
時間を進める、勇気を。

家は居心地がわるい。 友達はいるけど、どこか壁を作ってしまう。 そんな毎日の中、誰もいなくなった放課後の校舎に、かすかに響くメロディ。 心地よい音色に惹かれ、音楽室を覗いて出会ったのは、現国の教師。 忘れたい、そう思ってても、人はなかなか忘れられない。 あの時に戻れたらいいのに。 どうしたらいいの。 それは、まるで同じ場所をぐるぐる回っているだけのように思う。けれど、 どうにかしたい、と思っているのは、もう前を見てるから このセリフがすごく心に残りました。 だから、あと一歩、勇気を。 小さくていい、ほんの少しでいい。 そしたらきっと、みんながそれを支えてくれる。それが、おおきな一歩に、つながる。 自分自身で決めて踏み出すこと、そして周りには大切な人がたくさんいることに気づかせてくれました。 ぜひ、ご一読を。

続きを見る
★★★★★
2011/10/15 15:32
浮気彼氏はあたしの下僕?

2年付き合ってきた彼氏。 最近確かに「恋人同士」らしいことは減ったけれど、それでも上手くやっていたはずだった。 そう、だった……。 ところが見つけたモノは、浮気の確たる証拠。 もし、大好きで、信用していた彼氏に浮気されたらどうしますか? 許す? 別れる? それとも、下僕にする? もしも大好きな人を裏切ってしまったら? 失った信用はなかなか回復できない。 信じることを怖がってしまうかもしれない。 だけど、その先にある気持ちに、必死になって素直になって、また創り上げることが出来たら良いなと、そう感じた作品でした。 ハラハラしたり、切なくなったり、共感したり。 是非ご一読下さい。

続きを見る
★★★★★
2011/10/07 11:36
わたし

「別れよう」 そう言われるのはいつものことだった。付き合う人はいつも……「私」ではなく「妹」を好きになる。 双子ではないのに見た目がそっくりな姉妹。 似ているのは見かけだけ。性格は全く似ていないのに……。 似ていないからこそ、「妹」なのかもしれない。 だからもう……誰も信じない。いや、信じられない。 そんな主人公の前に現れた1人の少年、そして友達。 誰しもが願うだろうその気持ちが彼女は人一倍強かった。 「私」を見て。 だけど見失うことなく、常に背筋を伸ばして「自分」を保つ彼女はとても美しい。 そしてそんな彼女を真っ直ぐに見つめる彼の姿も。 自分を見つめてくれる人。 自分を見失うことがなければ……そんな貴方を誰かは必ず見てくれる。 「自分」を感じ、そして少し背筋が伸びるような、そんな作品でした。 是非、ご一読を。

続きを見る
★★★★★
2011/10/06 16:04
あの日、僕等は罪を穴に埋めた

あの日、僕等は罪を穴に埋めた。 その記憶を、必死に消し去ろうとして日々を過ごしてきた幼なじみの5人。 そしてその「罪」から逃げ出そうとする5人を捕らえるかのように起こる事件。 過ちを犯して、人は悲しいかな「過ち」に気付くことがある。 必死に自分を保つためにそうせざる得なかったとしても、それでもいかなる理由があろうとも罪は罪だ。 目を背け、忘れたりたいと願っても、過去は変わらないなくならない。 逃げ出しても逃げ出してもいつもすぐ傍にあるその過去。 大きな過ちをした主人公。逃げ出して忘れ去ろうしたけれど、徐々に向き合う姿には決して人のせいにしない思いがあり、常に自分を責める彼にとても胸が苦しくなりました。 とても身勝手でとても我が儘でとても攻撃的で、だけどとても繊細で、弱く優しく、徐々に逃げず罪に向き合う彼を 私はとても愛おしく思います。

続きを見る
★★★★★
2011/09/30 21:19
学生から、外へ

優等生で、学級委員の主人公。 好きな人が居るのに告白できないし、心の中では不満ばかりなのにいい子なフリをしてしまうし、 可愛いわけじゃないしスタイルだってイマイチだし。 そんな億劫な毎日を過ごしている中、たまたま出会ったのは 人を引きつける程輝かしく笑う、違うクラスの男の子。 高校三年生は、学生と呼べる最後の年。 その先は、今まで以上に無数にある選択肢から一つを選ばなければならない。 恋をして、喜んだり悲しんだりそして不安を抱いたり逃げたくなったり。 その一番奥深くにある「原因」は「相手」ではなく「自分」なのかもしれない。 意地っ張りで弱虫な主人公。だけど真面目で、しっかりと自分の足で過去を受け止めて未来に進み出す姿はとても素敵でした。 キラキラと輝く高校生時代の恋愛と成長を、是非ご一読ください。

続きを見る
★★★★★
2011/09/20 21:33
ただ、君が。

第一印象はそんなによくはなかった。 モヤシみたい、だなんて恋なんかには繫がりそうにない思いを抱いたはずなのに。 なのに気がつけば気になっていたのは君で。 気がついたら君の事ばかり考えていて。 気がついたら涙が溢れるほど、好きでした。 中学生の思い出。 中学時代から紡がれる、大切な想い。 幼くて逃げてしまうことばかりだったけれど、それだけ好きだった。 好きだから傷付くことが怖くて怖くて仕方なかった。 好きだから些細なことだけで幸せだった。 逃げないで向き合ってと想いながらも「なんで出来ないの?」なんて思えないのは、それだけ「好き」の気持ちを感じるから。 好きな気持ち。 幼くて上手に出来無くったって、そこにある気持ちはたった一つ偽りのない想い。 いつか、まっすぐに届けることが出来ますように。 そう願います。 是非ご一読を。

続きを見る
★★★★★
2011/09/13 19:06
季節がもたらす感情

春夏秋冬 その季節はいつどれだけの期間、そしてどのタイミングで訪れるか分からない。 昨日真夏だと思ったら 今日は真冬になった。 そんな場所で暮らす男の子と女の子。 いつも一緒にいたから、好きな気持ちに気付けなくて、気付いたって踏み出せなくて、 数ヶ月間訪れない「春」に願いを託す。 登場人物の気持ちにリンクするように変わって行く季節。 怖くて踏み出せなくて逃げ出して迷って避けて。 そうするほうが傷付かないから。そうすることが傷つけることもあるのに。 大事すぎて手放してしまった気持ち。だけど手放して手元に残った彼女のささやかな願いがとても純粋でまっすぐでした。 季節って四季って素敵だなと改めて感じました。 是非、ご一読を。

続きを見る
★★★★★
2011/09/13 13:50
傷と罪の共鳴

付き合って二年ほどになる樹と美里。 ところが、突然美里の様子が変わってきた。 長い髪をばっさりと切り落としたり、好みの花が変わったり、コーヒーよりも紅茶を望むようになったり……。 何があったのか どうしてこんなことを? そして明かされるのは、樹の過去の傷と罪、そして美里の傷と罪。 優しいリズムで進む物語りに一気に完読してしまいました。 愛とは何なのか。 2人の出した答え、そこに辿り着くまでの葛藤や悩みや後悔。 愛があるからこそ勇気が出せたんじゃないかなと感じました。 傷と罪が共鳴して出会ったのかもしれない。けれど育んできた時間は運命ではなく、作り出した物。 是非一度ご一読ください。

続きを見る
★★★★★
2011/08/25 01:08
彷徨いながら、出来た道

凪、祠稀、彗、有須 四人は何かに導かれるように一つの部屋に集い、そして共に日々を過ごし始めた。 前半で彗と有須の秘密が暴かれ、そしてこちらの後編では祠稀と凪の頑なに閉じてきたはずの秘密が晒される。 自分を守るために。 誰かを守るために。 憎み恨み隠し、たった一人で耐えて戦って。 強くあろうとした。弱さを知っているからこそ。 それが間違いだとか正しいとか、そんなことはきっと誰にも言えない。 たくさん泣いて傷ついて苦しくて負けてしまいそうになっても、時間という名の道が誰の背中にもきっと、あるんだと。 未来は幸せに溢れてる、なんて言えないけど過去はきっといつか笑って話せるかもしれない。 そこには必ず、人がいるから。 繊細で綺麗な文章に、必死に過ごす四人の姿に引き込まれました。 心に残る作品、ありがとうございました。

続きを見る
★★★★★
2011/08/11 14:36
色あせないラブレター

いつも仕事のお昼休みに同僚と足を運ぶ喫茶店。 行きつけのお店で、話しかけてくれるバイトの女の子。 そして新しく入った女の子。 恋をする気持ちは一つなのに、だけどそこから何かに発展するには一つの想いだけではうまくいかない。 好きだから傍にいたいのに、好きだから離れた方がいいとも思う。 好きだけど好きになってもらえないとか。 好きだけどそれは隠して秘めていたり。 この作品に出てくる登場人物は臆病だ。 とても臆病で、弱虫で、そして不器用。 だけど同じくらい真っ直ぐで、優しい。 一生懸命、「いつか」の日の為に今を過ごす彼らに、とても勇気づけられました。 一言一句に込められた想いと、思い出の詰まったキレイで丁寧な文章がとても素敵でした。 このラブレターを是非、多くの方に受け取って欲しいと思います。

続きを見る
★★★★★
2011/05/28 00:50
涙のキス

自分の罪に懺悔を繰り返しながら、そんな自分につぶされないように毎日を過ごす「しぃ」 自分の居場所を求めるようにさまよう「渉」 何もわからないまま、幼いながらに自分を責めながらその場にあろうとする二人は出会った。 何度涙を流したかわからないほどに悲しくて 何度も悔しい思いをして、何度も惨めな思いをして、必死に正しい道を探して。 何度も間違って 何度も人を傷つけて 何度も裏切られて それでもやめられないたった一つの気持ち。 その気持ちはまるで 雨上がりの虹のように感じました。 「何もできない子供」の時期を、「何かできる事があるはずだ」と必死で強く生きようとする、そんな二人をぜひ、読んで応援してみてください。

続きを見る
★★★★★
2011/05/19 17:20
キミ色とワタシ色

言っちゃ悪いけど、ランク外…そう思っていた中山君 そんな彼から急に告白されて…流れで付き合うことになってしまったサチ。 全然知らなかった。 知ろうともしなかった。 恋人同士らしい会話もないし、気のきいたことも言わないどころか、変に素直でちょっと引っかかることばかりの中山君。 そんな彼にイライラ振り回されながらも次第に惹かれては行くけれど… ありのままの自分 見栄っ張りな自分 我慢する自分 合わせてしまう自分 等身大の女の子と 等身大の男の子 読んでいて一生懸命で、時に間違って時に失敗して泣いたり足掻いたりする二人に後半は胸が締め付けられました。 二人の会話もとてもかわいらしくて、思わず読みながら笑みがこぼれました。 一生懸命な恋愛。 リアルな二人を、是非読んで、応援してあげて欲しいと思います。

続きを見る
★★★★★
2011/05/19 16:00
優しい嘘つき

平凡な学生だった汐。 そして出会ったのはビジュアル系ロックバンドの優太。 平凡だった毎日は、優太と出会ったことで一気にめまぐるしく変わって行く。 惹かれ合っていく素直な気持ち。 だけど、だからこそ、その思いのままに進めない。 傷つけるのは辛いから もっと傷つけないために今傷つける。 泣いて傷付いた心を癒してあげたい。なんでもいいから、傍に。 もう傷付きたくない、だから誰かに寄り添って好きなフリ。 人は嘘をつく。 それは自分を守るためか、相手を守るためか。 その嘘は 自分を傷つけてはいないだろうか。 優しい嘘で相手を傷つけ守り、そして自分を誤魔化した。 彼らが最後に選んだ道を是非、見届けてあげてください。

続きを見る
★★★★★
2011/04/21 11:07
見えない涙

気がついたときには、人形だった。 動くことも話すこともできないけれど、だけど想いだけはそこにあった。 心を持つ人形と。 心を失おうとする人形師。 人形から見た彼と、彼を取り巻くその世界の中で、ただ彼を想いながら彼の幸せを祈りながらそこに有り続けた。 彼の出会った三人の人たち。傷付きたくないから、時に人は自ら自分を傷つけてしまう。 人は変わって行く。 心も体も変わって行く。 誰もそこから逃げ出せない。 哀れで、悲しく、だけど純粋で綺麗な、そんな人形師を 唯ひたすらに、心いっぱいで愛した人形の物語り。 ゆったりと、静かに動くストーリーの中の、激しい想いが心に小さな傷跡をそっと残していくような、だけど心地良い余韻を感じました。 是非ご一読を。

続きを見る
★★★★★
2011/02/26 02:14
四文字の思い

バレンタイン。 悩みに悩んで選んだ言葉はたった四文字だった。 好きだから だけど 苦しいから 選んだ四文字 想いを込めた四文字 人は不安に支配されると、なかなか抜け出せない。悪いことしか想像出来なくて、自ら不安に溺れていく。 逃げたい 投げ出したい やめてしまいたい その奥底にある気持ちに気付くのはむつかしい。だけど気づいたら、きっと答えは簡単で、きっと、自分も笑顔になれる。 四文字にこめたたくさんの思いを感じる作品でした。 是非ご一読を。

続きを見る
★★★★★
2011/02/24 13:46
枯れない花

成功を夢見て上京したものの、成功とはほど遠い場所に立ち止まったままの主人公。 だけど傍には愛しい人。自分と違って成功した人。 そして差し出された指輪。 今の自分の気持ちが嘘なわけではないのに、差し出された指輪を受け取ることを躊躇う気持ち。 思い出す過去と 思い出す気持ち。 だけど一歩踏み始めたとき、きっと記憶の花は枯れることはないのだろう。 揺れ動く女の子に、ゆったりと進む物語。 ふわりと花の香りが漂うような短編でした。 素敵な作品、ありがとうございました。 「今、幸せ」 その言葉こそ、幸せだなと感じました。

続きを見る
★★★★★
2011/02/23 17:41
色あせない光

とある事情で、真昼に外に出ることが出来ない主人公、真陽 いつも見える景色は真っ暗な空。 優しく、だけど弱々しく光る月だけが、真陽の「光」 そんな毎日の中で出会ったのは、暗闇でもキレイに光り輝く髪の毛の男の子。 いつしか彼は真陽の心の光に。 だけどそれすらも… 母の、亡き父の思い。 そして彼の支え 何よりも自分の強さ 失うことのない光を感じました。 優しく暖かい作品。 ありがとうございました。

続きを見る
pagetop