想いと共に花と散る

 首を傾げる姿すらおかしいようで、二人はひとしきり笑い続けた。
 そして、ふうと一息つくと、鷹宮は真っ直ぐと雪の目を見る。

「まず初めに、君には言っておかねばならないことがある」
「は、はい」
「これから君が行く場所は、今まで過ごしてきた場所と比べると大したことがないだろう。余っ程、あの洋館や五稜郭で過ごしていた時間の方が良いかもしれない。だが、決して不幸にはならないと約束しよう」

 鷹宮も分かっている。つねだって、土方だって、皆分かっている。
 雪にとって、最も安心できる場所は土方の隣であり、昔と変わらない関係のままいることであると。
 しかし、雪もまた土方の幸せを願っているのも事実。
 彼が半端な気持ちで決断する人間ではないと知っているから、命令に従ったのだ。

「君は、土方君と京から来たんだってね」
「函館に来てからまだ半年ってところよねぇ」
「どうだい、今から行く君の新しい家で共に函館名物を食べないかい?」

 娘を持つ父親だからか、簡単に丸め込む優しさが言葉の端々から感じられる。
 今は過去になってしまったが、雪の父親になれたことを感謝した人がいた。その人は、行き場のない雪に居場所を与え、そしていつでも父親であろうとした。
 鷹宮とはまた別の父親としての姿。
 どちらの父親もその背中を見ていたいと思える、頼もしさが溢れていた。

「あっ、そうだ。鷹宮様、雪ちゃんが京の茶葉を持ってきているんです。よろしければ、一杯どうでしょう」
「京の茶か。それはさぞ良い品だろうね」
「そ、そんな、大して上手く煎れれませんっ」
「謙遜するものじゃないわよぉ。土方さんったらいつも嬉しそうに雪ちゃんが煎れたお茶を飲んでいたじゃない」

 嬉しそうに飲んでいただろうか。いつも眉間に皺を寄せて、無言で飲んでいたように思うが。
 函館に来てからは、茶を出すと一言「ありがとう」とは言われるように放った気もする。
 だが、その程度。笑うわけでも怒るわけでもなく、ただ淡々と飲むだけだった。

「結構分かりやすい人だけれどねぇ」

 つねという人は、何も考えていなさそうで意外と頭がキレるらしい。
 少しでも動揺を見せればすぐに突いてくる辺り、兄と似たものを感じた。