なんて不器用なのだろう。そして、優しすぎる。
「おつねさん!」
「あら?」
ふらふらと二人で町の中を歩いていると、つねの背後から聞き覚えのある男の声が飛んできた。
雪とつねは立ち止まり、声が聞こえてきた方向に目を向ける。
「鷹宮様!」
以前、琴による騒動の時に一度見たきりの鷹宮が二人の元へと近づいた。
あの時は琴に対して怒鳴り声を上げ、乱暴な素振りを見せていたが、今の鷹宮は年相応の穏やかな風貌をしている。おおよそ、今の彼が本来の姿なのだろう。
「聞いていた時間になっても来ないから迎えに来たんだ。そちらが結城君だね」
「あっ……」
ほとんど無意識につねの背後に隠れていた。彼を見た瞬間、確かな恐怖が襲ってきたのである。
洋館の庭で起こった一件に彼は関係ない。しかし、琴の肉親であるというだけで警戒せずにはいられなかった。
今この瞬間でも、何処かで琴が見ているかもしれない。
「……怖がられてしまうのも無理はない。あの時は、琴が本当に申し訳のないことをした」
「鷹宮、さん……」
「あの子は決して取り返しのつかないことをしたんだ。君の大切なものを燃やし、しかも日頃から傲慢な態度を取っていたとも聞いている。謝っても、謝りきれないっ」
琴という女は、一体何処まで残忍なのだろう。
一方的な嫉妬と妬みをぶつけ、悪行に走り、父親に尻拭いどころか子供に頭を下げさせるなど。
「あ、頭を上げてください。もう、いいんです」
「しかし……」
「今でも琴さんの事は許せないです。でも、あの時に分かったこともあります」
かつて、雪が傷負って止血をするために斎藤が首巻きを手放したように。
物に縋らずとも信じるべきものがあるのだと気づくことができた。
物を失った悲しみは消えていない。けれど、失ったからこそ彼らはすぐ近くにいるのだと思えたのだ。
「私は物に縛られていた。信じるものを見つけて前を向けたのは、あの日からなんです」
つくづく、琴は何処であんなにもひねくれた性格になってしまったのか分からない。
こんなにも心優しい父親を持っておきながら、あそこまで悪どい性格になるなど。
「やはり、噂に聞いていた通り強い子だ」
「え?」
「おつねさん、鬼の副長というのは伊達じゃないね」
「そうですねぇ」
二人して肩を揺らしながら笑い出す。雪は理由が分からず、こてんと首を傾げた。
「おつねさん!」
「あら?」
ふらふらと二人で町の中を歩いていると、つねの背後から聞き覚えのある男の声が飛んできた。
雪とつねは立ち止まり、声が聞こえてきた方向に目を向ける。
「鷹宮様!」
以前、琴による騒動の時に一度見たきりの鷹宮が二人の元へと近づいた。
あの時は琴に対して怒鳴り声を上げ、乱暴な素振りを見せていたが、今の鷹宮は年相応の穏やかな風貌をしている。おおよそ、今の彼が本来の姿なのだろう。
「聞いていた時間になっても来ないから迎えに来たんだ。そちらが結城君だね」
「あっ……」
ほとんど無意識につねの背後に隠れていた。彼を見た瞬間、確かな恐怖が襲ってきたのである。
洋館の庭で起こった一件に彼は関係ない。しかし、琴の肉親であるというだけで警戒せずにはいられなかった。
今この瞬間でも、何処かで琴が見ているかもしれない。
「……怖がられてしまうのも無理はない。あの時は、琴が本当に申し訳のないことをした」
「鷹宮、さん……」
「あの子は決して取り返しのつかないことをしたんだ。君の大切なものを燃やし、しかも日頃から傲慢な態度を取っていたとも聞いている。謝っても、謝りきれないっ」
琴という女は、一体何処まで残忍なのだろう。
一方的な嫉妬と妬みをぶつけ、悪行に走り、父親に尻拭いどころか子供に頭を下げさせるなど。
「あ、頭を上げてください。もう、いいんです」
「しかし……」
「今でも琴さんの事は許せないです。でも、あの時に分かったこともあります」
かつて、雪が傷負って止血をするために斎藤が首巻きを手放したように。
物に縋らずとも信じるべきものがあるのだと気づくことができた。
物を失った悲しみは消えていない。けれど、失ったからこそ彼らはすぐ近くにいるのだと思えたのだ。
「私は物に縛られていた。信じるものを見つけて前を向けたのは、あの日からなんです」
つくづく、琴は何処であんなにもひねくれた性格になってしまったのか分からない。
こんなにも心優しい父親を持っておきながら、あそこまで悪どい性格になるなど。
「やはり、噂に聞いていた通り強い子だ」
「え?」
「おつねさん、鬼の副長というのは伊達じゃないね」
「そうですねぇ」
二人して肩を揺らしながら笑い出す。雪は理由が分からず、こてんと首を傾げた。



