戦いの終りが近づいているのは、誰の目にも明らかであった。
宮古湾では甲鉄奪取に失敗し、弁天台場では新政府軍に突破され五稜郭へ撤退。
土方達の帰りを待ち望んでいた雪と市村は、初めは彼らが生きて帰ってきた安堵に胸を撫で下ろした。
しかしどういうわけか、今この瞬間、雪は絶望を感じていた。
「ど、どういうことですか……?」
「そのままの意味だ。てめぇには、ここから退いてもらう」
「え……」
「俺の小姓は終わりってことだ」
そう言い切るや否やくるりと背を向け、分かりやすく話を切り上げようとした。
雪は土方の背後に突っ立ったまま、言葉の意味が分からず絶句する。
「お、終わり? 何が、終わるんですか……?」
「もう、俺らみたいに血を見るなと言ってる」
ほとんど怒鳴り声に近かった。もうずっと聞くことのなかった、鬼の叫び。
出会ったばかりの頃は毎日のように怒鳴られていたのに、今はそんな棘も無くなって。
こうして拒絶されることなど、もう無いものだと思っていた。
「明日の朝、おつねさんがてめぇの部屋に来る。それまでに荷物をまとめておけ」
「ちょ、ちょっと待って。まだ、私何も言ってない」
「てめぇに拒否権があるわけねぇだろ。これは命令だ」
「し、知らない。そんなの知らない! いきなり小姓が終わりだって言われても、はいそうですかって言えるわけ無いじゃん!」
振り返ることもせず、目を見ようともせず、明らかに避けている。
自分から関係を断つようだ。雪との間に壁を作り、無理矢理距離を作ろうとしているのがその背中から感じられる。
「なんで? 私、ずっと隣りにいるって、ずっと付いて行くって。土方さんが聞いたんじゃん、一緒に来てくれるかって。それ、なのに……」
一体何があったのだ。彼の中で、一体何が生まれて何が崩れた。
はぐれるなと、一緒に来てくれと、そう隣で言ったのは土方の方だったはずだ。
まだ京にいた頃にも、蝦夷へと旅立つ船の上でも、彼は言ったのに。
「笑えてないから? 私が笑えてないから、明日が来るのが嫌になっちゃった?」
雪が隣で笑っている明日が見たい。
そう願ったのは紛れもない土方自身。そして、土方の隣で笑い、共に戦いたいと思ったのは雪。
確かに約束したのだ。同じ明日を見るために、隣りにいると。
宮古湾では甲鉄奪取に失敗し、弁天台場では新政府軍に突破され五稜郭へ撤退。
土方達の帰りを待ち望んでいた雪と市村は、初めは彼らが生きて帰ってきた安堵に胸を撫で下ろした。
しかしどういうわけか、今この瞬間、雪は絶望を感じていた。
「ど、どういうことですか……?」
「そのままの意味だ。てめぇには、ここから退いてもらう」
「え……」
「俺の小姓は終わりってことだ」
そう言い切るや否やくるりと背を向け、分かりやすく話を切り上げようとした。
雪は土方の背後に突っ立ったまま、言葉の意味が分からず絶句する。
「お、終わり? 何が、終わるんですか……?」
「もう、俺らみたいに血を見るなと言ってる」
ほとんど怒鳴り声に近かった。もうずっと聞くことのなかった、鬼の叫び。
出会ったばかりの頃は毎日のように怒鳴られていたのに、今はそんな棘も無くなって。
こうして拒絶されることなど、もう無いものだと思っていた。
「明日の朝、おつねさんがてめぇの部屋に来る。それまでに荷物をまとめておけ」
「ちょ、ちょっと待って。まだ、私何も言ってない」
「てめぇに拒否権があるわけねぇだろ。これは命令だ」
「し、知らない。そんなの知らない! いきなり小姓が終わりだって言われても、はいそうですかって言えるわけ無いじゃん!」
振り返ることもせず、目を見ようともせず、明らかに避けている。
自分から関係を断つようだ。雪との間に壁を作り、無理矢理距離を作ろうとしているのがその背中から感じられる。
「なんで? 私、ずっと隣りにいるって、ずっと付いて行くって。土方さんが聞いたんじゃん、一緒に来てくれるかって。それ、なのに……」
一体何があったのだ。彼の中で、一体何が生まれて何が崩れた。
はぐれるなと、一緒に来てくれと、そう隣で言ったのは土方の方だったはずだ。
まだ京にいた頃にも、蝦夷へと旅立つ船の上でも、彼は言ったのに。
「笑えてないから? 私が笑えてないから、明日が来るのが嫌になっちゃった?」
雪が隣で笑っている明日が見たい。
そう願ったのは紛れもない土方自身。そして、土方の隣で笑い、共に戦いたいと思ったのは雪。
確かに約束したのだ。同じ明日を見るために、隣りにいると。



