想いと共に花と散る

 妬むべきは市村ではない。非力でありながら無い物ねだりをする自分の方であった。

「それは、もう謝ることではないです」
「……え?」

 窓の外に投げていた視線を雪へと向け、市村はもう一度笑みを浮かべる。
 到底、同じ年頃の少年とは思えないほど大人びた笑みだ。

「結城さんは、確かに土方さんの隣で戦っていました。武士とか、刀とか、そんなものはもうどうだって良いんです。今じゃ、あっちこっちで銃だの大砲だのが売買されているんですよ。戦うための武器は、何も刀だけではない」

 その言葉は、今でも浅葱色の羽織を着て戦場に立とうとする市村が口にしては反感を買う言葉だった。
 誰よりも武士になることを望んだ人が頭にいた新撰組。
 浪人でしかなかったごろつきが集まり、皆が二本の刀を腰に提げられる現実に喜んでいた。
 そんな新選組隊士である市村が、武士という存在を否定するなど許されないはずだ。

「最高に格好良かったです。茶葉をぶちまける結城さんの姿は」
「……それ、褒めてるの?」
「褒めています。戦場に茶葉を持っていって、それを敵に向けてばらまくなんて俺じゃあ考えつかない」

 くすくすと肩を揺らして笑い、痛みで表情を歪めた後、再び市村は雪を見つめた。

「戦うための武器は何だって良いんです。刀、銃、大砲、拳に蹴り。それ以外にも、討論の場では口ですら武器になる。もちろん、武士だからこそ二本の刀を持つことが許され、それが存在証明になります。でも、自分に合う武器を使うのが一番いいんですよ」

 それこそ、豚に真珠。
 どれだけ剣の腕に長けた者でも学がなければ、作戦会議の場にいたとて何の案も浮かばない。
 逆に学がある者でも、剣術の心得がなければ刀を持ったとて持ち上げることすらできない。
 だから、戦う上で最も力を発揮するのは自分に合う武器を見つけること。
 それが勝利への近道なのである。

「結城さんの場合は、お茶っ葉だったんですね」
「あの後、土方さんには怒られちゃったけどね」
「伊庭さんには好評だったそうじゃないですか。お二人くらいですよ、船上の真ん中で茶葉をばらまきながら笑っていたのは」

 その言葉は、決して馬鹿にするわけでも蔑むわけでもない。
 むしろ、何処か嬉しそうに笑って市村は言った。