そう答えるであろうことは、すでに予想している。
わざと見下すような視線を向け、土方はただ試していた。
重要なのは、その次に出てくる“覚悟”の方なのだから。
「生きて戻る覚悟です」
戦場のことなんて何も知らない、上っ面だけの想像に憧れただけの愚かな子供だと思っていた。
けれど、それは間違いであったようで。
「死ぬ覚悟なら、誰でも口にできます。でも僕は、生きて戻ると決めています」
「生きると決めれば、生きられると思うか」
「思いません」
その答えを聞いた瞬間、土方は気づく。市村が向ける瞳の色に対する既視感の正体に。
(あいつか……)
ただ同じ小姓という立場にいるからだけではない。同じ十五歳だからというわけでもない。
同じ言葉を使っても、その裏にある決意が違う。
市村は土方の隣で刀を握り戦うことを望む。血の雨が降る戦場を走ることを望んでいる。
その一方、雪は刀を握って戦うのではなく、同じ戦場で土方達を支えることを望んでいた。違う場所で一人だけ守られるのは嫌だと。
「ですが、決めなければ死しか待っていません」
「……違いない」
その一瞬で土方の表情が緩み、市村はきょとんと首を傾げた。
圧を掛けるように立っていたが、一歩後ろに下がり再び市村を見る。
「第一試験、合格ってことにしてやる」
「えっ?」
その時、市村の前にいたのは、旧幕府軍陸軍指揮官ではなく、新撰組鬼の副長その人である。
新撰組入隊試験に立ち会った時、多くの入隊志願者は土方の「どのような覚悟を持ってしてここにいる」という問にこう答えた。
『命を懸ける覚悟である』
と。
「武士に憧れる連中ほど、己の命を軽んじる。俺ぁそれが気に食わねぇんだ」
新撰組は京の治安を守るため、この日本国を守るためにある。それがかつての局長、近藤勇の誠であった。
そんな組織に命を散らせること前提で所属されても、無駄な戦力を抱えるだけ。
かつての土方も、今の土方も、そんな思想が気に食わなくて仕方がなかった。
「市村」
「は、はいっ」
「戦場で考えるべきことは、たった一つだけだ」
「……何でしょうか」
人間、死ぬのは簡単だ。首を斬られるか、頭を殴られるか。急所を突かれれば簡単に死ぬ。
それよりも、生きることが難しい。
戦場に出れば四方八方で砲弾が飛び交い、血が流れ、叫び声が聞こえる。そんな状態で生き残るなど絶望的だ。
そんな状況下で生きる覚悟を持ち続けられる者ほど、武士だと言える。
それが土方の憧れた武士像であり、持論であった。
わざと見下すような視線を向け、土方はただ試していた。
重要なのは、その次に出てくる“覚悟”の方なのだから。
「生きて戻る覚悟です」
戦場のことなんて何も知らない、上っ面だけの想像に憧れただけの愚かな子供だと思っていた。
けれど、それは間違いであったようで。
「死ぬ覚悟なら、誰でも口にできます。でも僕は、生きて戻ると決めています」
「生きると決めれば、生きられると思うか」
「思いません」
その答えを聞いた瞬間、土方は気づく。市村が向ける瞳の色に対する既視感の正体に。
(あいつか……)
ただ同じ小姓という立場にいるからだけではない。同じ十五歳だからというわけでもない。
同じ言葉を使っても、その裏にある決意が違う。
市村は土方の隣で刀を握り戦うことを望む。血の雨が降る戦場を走ることを望んでいる。
その一方、雪は刀を握って戦うのではなく、同じ戦場で土方達を支えることを望んでいた。違う場所で一人だけ守られるのは嫌だと。
「ですが、決めなければ死しか待っていません」
「……違いない」
その一瞬で土方の表情が緩み、市村はきょとんと首を傾げた。
圧を掛けるように立っていたが、一歩後ろに下がり再び市村を見る。
「第一試験、合格ってことにしてやる」
「えっ?」
その時、市村の前にいたのは、旧幕府軍陸軍指揮官ではなく、新撰組鬼の副長その人である。
新撰組入隊試験に立ち会った時、多くの入隊志願者は土方の「どのような覚悟を持ってしてここにいる」という問にこう答えた。
『命を懸ける覚悟である』
と。
「武士に憧れる連中ほど、己の命を軽んじる。俺ぁそれが気に食わねぇんだ」
新撰組は京の治安を守るため、この日本国を守るためにある。それがかつての局長、近藤勇の誠であった。
そんな組織に命を散らせること前提で所属されても、無駄な戦力を抱えるだけ。
かつての土方も、今の土方も、そんな思想が気に食わなくて仕方がなかった。
「市村」
「は、はいっ」
「戦場で考えるべきことは、たった一つだけだ」
「……何でしょうか」
人間、死ぬのは簡単だ。首を斬られるか、頭を殴られるか。急所を突かれれば簡単に死ぬ。
それよりも、生きることが難しい。
戦場に出れば四方八方で砲弾が飛び交い、血が流れ、叫び声が聞こえる。そんな状態で生き残るなど絶望的だ。
そんな状況下で生きる覚悟を持ち続けられる者ほど、武士だと言える。
それが土方の憧れた武士像であり、持論であった。



