ちらりと頭上を見ると、期待に満ちた市村の視線が降り注いでくる。
遠慮がちな態度を依然として保ってはいるが、好奇心だけは隠しきれていない。
『あったけぇ、お前の隣は』
とくんと心臓が脈打った。
「っ………」
顔が熱い。
『泣きそうなくらい……綺麗だよ』
一度大きく跳ねた心臓は、すぐに激しく脈打ちだして。
「結城さん? やっぱり体調が優れないんじゃないですか? 顔が熱いですよ」
「────……っ!!」
すぐ眼前に市村の顔が迫った。同じ十五歳にしては、少し幼さの残る顔。
そんな彼は、羽織に隠れていた手を出して、自身の額と雪の額にそれぞれ触れた。
ひやりとした掌の感触が額に広がっていく。
「熱、があるわけではなさそうですが……」
無自覚というのは、どんな武器や幽霊や鬼よりも恐ろしい。
市村の無自覚な行動。
雪の無自覚な想い。
それらは、天秤にかけると同じ重さを指し示す。
「念の為、休まれた方が良いんじゃないでしょうか。無理はお身体に障りますし」
「む、無理なんてしてない! してないから、大丈夫!」
「ですが、顔赤いですよ?」
「何回も言わないでぇ!」
顔の前でブンブンと手を振り、市村の手から身を仰け反らせて逃れる。
丸い目を一層丸くしてきょとんと首を傾げる市村に合わせる顔がなく、雪はやけくそで顔を背けた。
「……もしかして、海で何かあったんですね!」
今の流れは、完全に話が終わりを迎えていたところだっただろう。
何故この少年は、わざわざ話を掘り返して雪の痛いところを的確に抉ってくるのだ。
もう雪は市村を見られず、顔を手で覆うことしかできなかった。
「安心してください。僕、口は堅いんです! 榎本さんにも大鳥さんにも、ああ、つねさんには絶対に言いません!」
こんなにも信用のできない宣言などあるだろうか。
指の隙間から覗く様に市村を見ると、これはまた自信に満ちた顔をしている。
犬系男子。ふと、そんな言葉が浮かぶ。
キラキラと輝くつぶらな瞳を向けるその姿は、餌を前にした子犬同然だ。
「……絶対?」
「絶対」
「絶対、絶対?」
「だから、絶対言いませんってば」
「なら……いいよ」
傷一つない小さな手が伸ばされて、茶葉が引っ付いた手で握り返す。
思っていた以上の力で引っ張られたことで、すぐに立ち上がれた。
遠慮がちな態度を依然として保ってはいるが、好奇心だけは隠しきれていない。
『あったけぇ、お前の隣は』
とくんと心臓が脈打った。
「っ………」
顔が熱い。
『泣きそうなくらい……綺麗だよ』
一度大きく跳ねた心臓は、すぐに激しく脈打ちだして。
「結城さん? やっぱり体調が優れないんじゃないですか? 顔が熱いですよ」
「────……っ!!」
すぐ眼前に市村の顔が迫った。同じ十五歳にしては、少し幼さの残る顔。
そんな彼は、羽織に隠れていた手を出して、自身の額と雪の額にそれぞれ触れた。
ひやりとした掌の感触が額に広がっていく。
「熱、があるわけではなさそうですが……」
無自覚というのは、どんな武器や幽霊や鬼よりも恐ろしい。
市村の無自覚な行動。
雪の無自覚な想い。
それらは、天秤にかけると同じ重さを指し示す。
「念の為、休まれた方が良いんじゃないでしょうか。無理はお身体に障りますし」
「む、無理なんてしてない! してないから、大丈夫!」
「ですが、顔赤いですよ?」
「何回も言わないでぇ!」
顔の前でブンブンと手を振り、市村の手から身を仰け反らせて逃れる。
丸い目を一層丸くしてきょとんと首を傾げる市村に合わせる顔がなく、雪はやけくそで顔を背けた。
「……もしかして、海で何かあったんですね!」
今の流れは、完全に話が終わりを迎えていたところだっただろう。
何故この少年は、わざわざ話を掘り返して雪の痛いところを的確に抉ってくるのだ。
もう雪は市村を見られず、顔を手で覆うことしかできなかった。
「安心してください。僕、口は堅いんです! 榎本さんにも大鳥さんにも、ああ、つねさんには絶対に言いません!」
こんなにも信用のできない宣言などあるだろうか。
指の隙間から覗く様に市村を見ると、これはまた自信に満ちた顔をしている。
犬系男子。ふと、そんな言葉が浮かぶ。
キラキラと輝くつぶらな瞳を向けるその姿は、餌を前にした子犬同然だ。
「……絶対?」
「絶対」
「絶対、絶対?」
「だから、絶対言いませんってば」
「なら……いいよ」
傷一つない小さな手が伸ばされて、茶葉が引っ付いた手で握り返す。
思っていた以上の力で引っ張られたことで、すぐに立ち上がれた。



