想いと共に花と散る

 生きていた人が死ぬのは簡単。急所を狙えば、一発で死ねる。

『俺は、孤独に生きていた。満たされず、認められず、いつも何かに飢えていたんだ。そんな俺に、剣を教えてくれた師匠がいた。師匠が、“首は急所となる”と言ってこの首巻きを渡してきたから、俺はずっと肌見放さず身に着けた』

 急所を隠して生きれば、理屈上は誰も死なない。
 けれど、そんな理屈が通じない世界で生きているからこそ、数え切れないだけの命が散っていった。

「私だって、置いてきましたよ」

 何も土方だけではない。雪だって、遠い世界に置いてきたものがある。

「折角お揃いだったのに、きっと失くすからって預けてきちゃった」

 あのネックレスは今も残っているだろうか。
 いや、小夜のことだからきっと預かってくれている。そして、今も帰りを待っている。

「私達、やっぱり似てますね」
「……何処がだよ」
「んー、何処がって言われると分かんないけど……」

 家に居場所がなかった。自分の存在価値が分からなかった。
 あの日の夜、雪は土方の過去を聞いてそれらが似ていると思った。
 けれど、今はそれ以上の共通点があるような気がする。

「自分の居場所を誰かに与えられた、ってところかな」

 そして、そんな居場所を与えてくれた人は同じ人。
 時期、場所、生まれ、出会いは違っても、確かに居場所を与えてくれた人がいた。
 まあ、そんなこと言ったって「んなわけねぇだろ」と言って一蹴される。
 土方歳三は土方歳三、結城雪は結城雪。似てなくて良い、むしろ似ていない方がいいかもしれない。
 そう、思ったのに。

「……ははっ、違いねぇ」

 なんで、そんなに嬉しそうに笑うの。
 いつもの鬼さんは何処? 仏頂面で、あれをしろこれをしろって命令をする指揮官様は?

「雪の中 折れずに立てる 花ひとつ」
「え……?」
「やっぱし、お前は雪に埋もれるにゃもったいねぇよ」

 そんな俳句聞いたことない。総司君と読んだ豊玉俳句集に載ってなかった。
 
「そ、それって……」
「即興だが、中々にいい出来だと思わねぇか?」

 そう言って頬に触れる手は割れ物を扱うように繊細で、優しく細められた目は雪だけを映していて。
 ぎゅうっと何かが雪の心臓を掴んだ。否、心臓よりももっと奥、到底手を入れても届かないところが締まって苦しい。