ありがとう。大嫌い。



ベッドの周りのカーテンを締め切る直前、

振り返った四宮せんせーはふっと優しく微笑んだ。


「おやすみ。紗綾ちゃん」

「うん、おやすみ。せんせー」


カーテンが閉められて足音が遠ざかっていく。


電気も落とされた暗い部屋では、私だけしかない。


まるで世界にたった一人取り残されてしまったみたい。

でも、実際そうなのかも。


病院が嫌で逃げ出せば看護婦達は私を探すけど、それは仕事だから。


四宮せんせーだって、自分の担当患者だから優しくしてくれてるだけ。

私以外にもたくさん患者さんはいるんだもん。



「⋯⋯ま、寝れないよねー」



どうやら、中庭でさっちゃんが表に出てきて、この部屋で目覚めるまで。


それはそれは深い眠りについていたようで。


到底、眠気のない状態でベッドの上にいても寝られるはずがない。



むくりと状態を起こして小さくカーテンを開けると、
忍び足で部屋の外を覗く。


しめた。

今は、夜勤の人達以外の皆は、自宅で寝るなり何なりしている時間。


私一人が部屋を抜け出したって誰も気づかない。



そっと部屋の扉を閉めて、壁伝いに廊下を進む。



「へへへ、やっぱり私ってかくれんぼの天才かも」



そんな幼稚な空想を繰り広げながら、いつもの如く中庭に続く勝手口を開ける。


本来、この中庭は病棟に囲まれるようにしてあるため、勝手口のような出入口がないと外には出られない。



けれど、かくれんぼの天才である私は知っている。



病棟と病棟の間にある囲いの一部が崩れていることに。



前までは、病棟に囲われているから外に出られないと思っていたが、

実はこの崩れた囲いを超えると簡単に外に出られるのだ。