「ねー、せんせー。言ってよ」
と、あれから二時間ほど経って。
あとは寝るだけという状態まで準備を終えた私は、ベッド脇のパイプ椅子に座る四宮せんせーを問い詰めていた。
当の本人は何処か上の空で、すっかり日が落ちた夜の街を眺めている。
「“さっちゃん”が出た時が一番恥ずかしいって言ってるじゃん!」
「何を恥ずかしがる必要がある。あれは君の病気による症状の一つだ。いつ出てくるか分からないし、止められるものでも無い」
「いやいや、十五にもなる女子があんな子供じみた行動するってやばいからっ!」
さっきから出てくる“さっちゃん”というのは、
私こと遠藤紗綾が抱える解離性障害の症状のうちの一つ、
いわゆる多重人格と言われる症状によって生まれた存在のこと。
“紗綾”は年頃の十五歳で、基本的に表に出るのはこの私。
でも、時々発作で出てくる人格が、例の五歳くらいの少女である“さっちゃん”なのだ。
「次からはできるだけ周りに知られないようにする。だから今日はもう寝なさい」
「⋯⋯はーい」
そう言って四宮せんせーはいつも頭を撫でる。
初めは子供扱いされているようで嫌だったけど、
今はこれがないと安心して寝られない身体になってしまった。
何かに縋らないと夜も寝られないのは、きっとこの病気のせい。



