未完成のワンフレーズ




「才能……かぁ」



ぽつりと呟いた、その時だった。



「何が才能だって?」

「うわっ!」



突然、背後から声がして二人揃って飛び上がる。




「タ、タケちゃん!?」



振り返ると、覗き込むようにして看護師のタケちゃんが立っていた。

相変わらず気怠げな表情をしている。



「そんな驚くかよ」

「いつからいたの!?」

「お前らが演奏始めた辺りから」

「だったら声かけてよ!」

「邪魔するのも悪いだろ」



そう言って、タケちゃんは私達の少し離れたところに腰を下ろした。



「で? 才能がどうとか言ってただろ」

「聞いてたんだ……」

「聞こえてきたんだよ」




タケちゃんは私の膝の上にあるギターを見る。




「二週間でそこまで弾けるなら、確かに普通とは言い難いな」

「……やっぱり?」

「うん」



その一言で、胸の奥が少しざわついた。



「でもさ」



私はギターの弦を指先で撫でる。


これは私のギターじゃない。隣で歌っていた李仁のものだ。


それなのに、私に才能があるなんて。

そんな都合のいい話なんてあってたまるか。




「私に才能なんてあるわけないじゃん」

「なんで?」

「だって、私だよ?」

「その理屈が一番分からん」

「だって……」



私は少しだけ俯いて、ぶつぶつと呟いた。



「今まで、何かができるって褒められたことなんてないし」

「……」

「勉強だって普通。運動だって普通。人と話すのだって苦手」




自分で言っていて、なんだか笑えてくる。

けれど、やっぱり誰かだ褒めてくれた記憶なんて無い。


入院し始めてから四宮せんせーが褒めてくれたのが初めてな気もする。




「そんな私が、ギターだけ二週間で弾けるって言われても……よく分かんない」




タケちゃんはすぐには答えなかった。