未完成のワンフレーズ



翌日、中庭のベンチにギターを抱えて待っていると、李仁が近づいてきた。




「……今日は顔色いいね」

「まあな」

「昨日は死人みたいだったもん」

「お前、ほんっとに容赦ねぇな」

「事実じゃん」




昨日より少しだけ血色の戻った李仁と、病院の中庭にある芝生の上に並んで座る。



私はギターを。

李仁は歌を。

いつものように、二人で音を重ねる。



ぽろん。

ぽろん、ぽろん。



最初の頃は、コードを押さえるだけで指が痛くて仕方なかった。

今だって痛いけど。



それでも、もう曲を止めるほどではない。




「――」




そして、私が奏でるギターに合わせて、隣から李仁の歌声が重なる。



何度聞いても、この声は好きだ。

少し掠れているのに、何処までも真っ直ぐで。



聴いていると、胸の奥に溜まっていたものが少しずつ溶けていくような気がする。




「……」



ふと顔を上げると、私達の周りには、いつの間にか人が集まっていた。


看護師さん。

入院している子どもたち。

その家族。

そして、車椅子に座ったおばあちゃん。

最初は数人だったのに。

今では、演奏を始めれば誰かが足を止めてくれる。




「なんか……有名人になった気分」

「調子乗んな」

「いいじゃん。ちょっとくらい」

「お前はすぐ調子乗るから駄目」

「むかつく!」




そう言いながらも、私は笑っていた。



演奏を終えると、周りから小さな拍手が起こる。




「ありがとうございましたー!」




私がペコッと頭を下げると、集まっていた人達も笑顔を返してくれた。