未完成のワンフレーズ




でも、その笑顔も。

いつもより少しだけ弱々しい。




「……疲れた?」

「まあ、ちょっと」

「じゃあ寝れば?」

「お前、俺が帰ってきた瞬間に寝ろって言うのかよ」

「だって顔色悪いし」

「うるせぇな」

「心配してるんですー」

「はいはい」



李仁はそう言いながら、ベッドに腰を下ろした。

そして――。




「……っ」



ほんの一瞬、眉を寄せた。



「どうかした?」

「……何でもない」

「今、痛かった?」

「別に」

「絶対痛かったじゃん」

「うるさい」



いつもの調子で躱される。どうせ聞いたって無駄だとは分かってた。



だけど、私は、なんとなく気づいてしまった。

李仁が左手で、右腕を庇うように押さえていることに。




「……李仁」

「ん?」

「今日、何の検査だったの?」

「……いろいろ」

「いろいろって何」

「いろいろは、いろいろ」

「ずるい答え方」

「病院の検査なんてそんなもんだろ」

「ふーん……」




納得はしていない。


こんな曖昧な答え方をされて、納得なんてできるわけがないもん。



「……ああ」

「今日はリベンジ!」

「何の?」

「ギター!」

「あそこギター弾く場所じゃねぇだろ」

「いいじゃん!」





李仁はしばらく黙っていた。


そして――。




「……今日は、やめとく。疲れてる」

「⋯⋯そっか」

「悪い」

「別に」



これは笑って済ませないと。


笑顔で、笑って⋯⋯。


笑い飛ばさなきゃ。全部、全部。





「じゃあ、明日ね」

「……ああ」

「約束」

「約束」



小指を立てて差し出せば、李仁も自分の小指を立てて絡める。



そのときに見た彼の笑顔を私は何も疑わなかった。



今日の検査が何だったのかも。

どうしてあんなに疲れているのかも。


何も――。