未完成のワンフレーズ





それから、どれくらい経っただろう。



私はベッドの脇に置かれたパイプ椅子に座って、ひたすら時計を眺めていた。




「……遅い」




検査って、こんなに時間かかるものなの?




ギターを練習しようと思っていたのに、さっきの写真が頭から離れない。

ケースの中に突っ込んだままの一枚。




気になって仕方がないけど、もう一度見る気にはなれなかった。




「……なんだったんだろ」




考えようとすると、頭の奥がざわざわする。



だから、考えるのをやめた。




「李仁、早く帰ってこないかなぁ」




そう呟いた、その時。




「……!」




ガラッと音を立てて病室の扉が開いた。




「李仁!」



私は反射的に立ち上がって、満面の笑みで彼に向かって手を振った。



「おかえり!」

「……ただいま」




返ってきた声は、いつもより小さかった。


それでも、こうして顔を見れたことが何よりも嬉しい。




「遅かったじゃん!」

「……悪い」

「何処行ってたの?」

「検査」

「それは知ってる」

「じゃあ聞くなよ」

「だって暇だったんだもん」




いつものように言い返してやろうと思った。

けれど――。



「…………」




李仁の顔を見て、言葉が止まった。




「……何?」



なんとなく。

なんとなくだけど。




「顔色悪いよ? しんどい?」

「別に⋯⋯」

「そうは見えないけど」




李仁は自分の頬を触った。顔色は悪いけど、その間でも李仁はいつも通り私に生意気な顔を向けた。




「気のせいだろ」




そう言って笑う姿は、確かに普段の李仁と何も変わってない。


だったら、私の気のせいなのかな?



でも、これ以上聞いても答えてくれなさそうだった。




「……まあいいや」




私は椅子にどっかりと座り直して、真っ直ぐと李仁の目を見つめる。




「それより!」

「何だよ」

「今日、外行こうと思ってたの!」

「外?」

「うん。前に中庭に行ったでしょ?」