未完成のワンフレーズ





「よいしょっと……」




チャックを開けて、中を覗き込む。

ギターを取り出そうと手を伸ばした、その時だった。





「おっと」




ひらり、と何かがケースの隙間から落ちた。

床に落ちたそれを拾い上げる。




「……なに、これ」




ケースの中から飛び出してきたのは、古びた一枚の写真だった。



「っ⋯⋯!」



これは、見ちゃ駄目なやつだ。

本能が今すぐ手放すように叫んでいる。



震える右手を左手で抑えて、手にしていた写真を無理矢理ケースに突っ込んだ。



「れ、練習しなきゃ⋯⋯。検査の間にめちゃくちゃ上手くなってやる!」



私は何も見てない。ただ、練習するためにギターを取り出しただけなんだから。

そうでしょ、

李仁。



「⋯⋯⋯」



なんでかなぁ⋯⋯。


練習しなきゃいけないのは分かってるのに、全然手が動かないや。




「早く戻って来ないかなぁ⋯⋯」



嫌いだし、生意気だし、腹立つけどさ。


やっぱり、李仁がいないとつまんないや。



早く検査終わらせて、ギターの練習と作曲を少し進めたら、

今日は一緒に外に行こう。


それで、もう一度リベンジするの。


あの時は、不本意だったけどさっちゃんに邪魔されちゃったし。

李仁には迷惑かけちゃったわけだし。


今度こそ、この病院の穴場を私が教えてあげるんだから。