未完成のワンフレーズ




月日が経つというのはあっという間で。


気がつけば、ギターを始めてから二週間が経とうとしていた。



今日から実際に李仁が作った曲を練習するのだ。

気合を入れて指の体操もしてきた。準備は万全である。




「あれ?」



ちょうど李仁の病室から、一人の女性が出てきた。


白衣ではなく、淡い色のナース服。

胸元には看護師の名札が付いている。




「あの……」

「ん?」




見るからに優しそうな女性がこちらに振り返った。


年齢は……四宮先生よりちょっと若いくらい?

いや、分かんない。

大人の年齢って、全然分からない。




「すみません」

「どうしたの?」

「この病室の李仁って――」




そこまで言うと、看護師さんは少しだけ目を細めた。




「ああ、李仁君のお友達?」

「……友達、なのかな」

「違うの?」

「……たぶん友達」

「ふふっ」




何がおかしいのか、看護師さんが小さく笑った。


笑うとえくぼがくっきりと浮かんで可愛らしい。魔性の女ってやつ?




「今日はね、李仁君はいないの」

「え?」

「検査に行ってるから」

「検査?」




思わず聞き返してしまった。


入院していれば検査なんて日常茶飯時であるし、私だって日頃から検査やらカウンセリングに追われている。

だから、


李仁が検査で病室にいなくても何も可笑しくないはずなのに。





「うん。少し時間がかかる検査だから、戻ってくるのはもう少し後かな」

「……そっか」




なんだ。

せっかく来たのに。



「じゃあ、ここで待っててもいい?」

「もちろん。ただ、検査が終わるまでは少し時間がかかると思うよ」

「じゃあ待ちます!」

「そんなに李仁君に会いたいの?」

「ギターの練習しに来たの!」

「ギター?」

「私、今教えてもらってるんです」





そう言って、李仁のベッド脇の棚に立て掛けられているギターケースを指差す。