未完成のワンフレーズ




「……それだけ?」

「それだけって何!」

「いや、もっとこう……あるだろ」

「あるけど!」

「じゃあ言えよ」

「言えないから困ってるの!」



知ってます?

私、十三歳からこの病院にいるんですよ。


義務教育のど真ん中で、入院し始めてしまったんです。



「……ふはっ」

「何!」

「いや、お前らしいなって」

「何処が!」

「語彙力ないところ」

「うっさい!」



李仁は、くすくすと笑う。


さっきまで歌っていた人と同じとは思えないくらい、いつもの生意気な顔だった。




「……で、この曲、いつ作ったの?」

「ちょっと前」

「完成してるの?」

「……まだ」

「え?」


あんまりにも小さな声だったから、聞き間違えたのかとも思ったけど、

どうにも李仁の様子を見ているとそうじゃないらしい。



何処か悲しげに、何処か恥ずかしげにギターを見つめる瞳は輝いている。



「まだ途中」

「途中?」

「歌詞も、メロディも。まだ納得してない」

「でも、すごかったよ?」

「俺が納得してないから未完成」

「……ふーん」



よく分からない。

でも、なんとなく李仁らしいと思った。



「じゃあ、完成したら聞かせてよ」

「……」



李仁の指が、ぴたりと止まった。



「なんで?」

「なんでって……」



そんなこと一々聞く必要ある?

私は李仁の曲が素敵だと思って、未完成ならその続きが気になるのは当たり前で。



「続きが気になるから。それに、私この曲好きだもん」



そう言うと、李仁は少しだけ目を逸らした。



「……分かった」

「ほんと?」

「ああ」

「約束ね!」

「はいはい」

「絶対だからね!」

「分かったって」



そう言って笑う李仁を見て、私も笑った。