未完成のワンフレーズ




ぽろん。

ぽろん、ぽろん。



やっぱり、ギターは下手だ。

音が外れているわけじゃない。

ただ、ところどころ指が追いついていなかったり、弦を押さえる力が弱かったりして、綺麗な音になりきれていない。



なのに――。




「……」




どうしてだろう。

さっきまでなら、絶対に「下手」と言っていたはずなのに。



今は、何も言えなかった。



微かに聞こえていた鼻歌が、少しずつ大きくなっていく。

そして――。



「――」



李仁が、歌い始めた。



「…………」



ギターとは、まるで別人みたいだった。

少し掠れた声だけど、音程は何処までも正確で、一つ一つの言葉が、胸の奥に真っ直ぐ入ってくる。



知らない曲。

聞いたことのないメロディ。

なのに、不思議と懐かしい。

まるでずっと昔から知っていたみたいな気がする。




「……なに、これ」




私の呟きなど耳には入っていないようで、李仁はただ、目を閉じたまま歌っている。

その横顔が、さっきまでの生意気なガキとは別人に見えた。



(なんか⋯⋯落ち着く⋯⋯)



いつもなら、夜が嫌いだった。

静かすぎて、考えたくないことまで考えてしまうから。



でも今は違う。

静かな病室に響く李仁の歌声が、夜の隙間を埋めていく。



私は、いつの間にかベッドの上で身動きひとつせず、彼の歌を聞いていた。



曲が終わっても、拍手することすら忘れてしまうくらい、

彼の曲に、歌に聞き入ってしまっていた。



「……おい」


歌声とは打って変わって、しゃがれた李仁の声が聞こえてはっと顔を上げる。



「かんそーは」

「っ⋯⋯めちゃくちゃ好き。李仁、すごいよ」



それ以上何を言えばいいのかも分からない。



とにかくすごい。

とにかく感動した。


この想いを言葉にできない自分の語彙力に腹立たしさすら感じる。