ほんの少しだけ、見直そうとした心を返してほしい。
「やっぱり、嫌い」
「あ?」
「生意気ガキ。嫌い。絶対あんたにありがとうなんて言わない!」
ぷいっとそっぽを向けば、簡単に彼の興味は何処かに行ってしまうらしく。
ちらりと横目で見た頃には、すでにギターの音色が奏でられていた。
相変わらず無駄な弦の音が鳴っていたり、
逆にちゃんと押さえられていなくて音が響いてなかったりして下手だけど。
「それ、その曲作ったの?」
微かに聞こえる鼻歌は、思わず聞き入ってしまうほど儚い旋律だ。
「⋯⋯そーだったら?」
「えっ、李仁が作ったの!? 作曲できるってすごい!」
音楽なんて、中学校で魔王を友達と聞いて「マイファーザーwww」って笑っていた記憶しかない。
だから、私からしてみれば難しい音楽理論を理解していて、
作曲までできるのは純粋に尊敬する。
「もっと聞かせてよ」
「⋯⋯嫌だ」
「えーー、なんでー? もっと聞きたい聞きたい!」
ガタガタ、ガックンガックン、バンバン。
李仁の肩を揺らして、机を叩いて、駄々っ子のように懇願する。
そうすれば――。
「少しだけなら、まあ」
相手を言いくるめることができるのです。
「―――っ! やったぁ! ありがと李仁っ」
こいつにだけは『ありがとう』なんて言わないと思ってたけど、
私だって根は優しいので。
感謝の気持ちは忘れないのです。
「大したもんでもねぇのに、なんでそんなに喜べるんだか⋯⋯」
そうは言いつつも、根は優しい李仁君はギターを抱え直すと、
相変わらず下手な音色を奏で始めた。



