「……でも、私、親にも見捨てられてるし」
「そう思ってるんだな」
「だって二年間、一度も来てない」
「うん」
「普通、親だったら来るでしょ」
「……そうだな」
否定しない辺り、図星なんだろう。
いつもの四宮せんせーなら、もっと何か言ってくれると思っていた。
でも今日は違った。
「だから、紗綾ちゃんが『自分なんていてもいなくても同じなんじゃないか』って思うのは、無理もないことだと思う」
その通り。
だから、私は親が見舞いに来ない理由を可哀想な女の子を演じるために利用してる。
「でも、それは紗綾ちゃんの価値とは別の話だ」
「別……?」
「親が来ないことと、紗綾ちゃんに価値がないことは同じじゃない」
その言葉が、胸の奥にゆっくり沈んでいく。
嬉しいなんて思っちゃいけないはずなのに、どうしても喜びで胸が熱い。
「今すぐ『生きたい』と思えなくてもいい」
「……」
「まずは、『今日を終える』でいい」
「今日を……?」
「ああ。明日も、その次の日も生きなきゃいけないって考えるから苦しくなるなら、一日ずつでいい」
四宮せんせーは私の目を見て、甘い微笑みを見せた。
「今夜、眠るまで⋯⋯それだけでいい」
私は何も言えず、せんせーの顔から目を逸らす。
とは言ってもカーテンに囲まれたこの環境では、視線を逃がせる存在なんて無い。
だから、嫌でも四宮せんせーを見なきゃいけない。
そんな時は、四宮せんせーの名札を見るんだ。
『四宮旭』
きっと、李仁のフルネームも、
『四宮李仁』
になっているんだろうな。
「……せんせー。後でお礼、言いに行ってもいいかな」
「李仁は根は優しい子だ。きっと、すぐ打ち解けるさ」
四宮せんせーが小さく笑う。
その笑みは、お医者さんじゃなくて一人のお兄ちゃんだった。



