「自分の気持ちが分からない時に、無理やり答えを出そうとしなくていい」
「でも、先生。私、もう二年もここにいるんだよ」
「知ってる」
「なのに、何も変わってない」
「何も変わってない?」
「……うん」
一向に治る兆しの見えないこの病気。
解離性障害は回復できないわけではない。適切な治療と、長く療養を続ければ落ち着いていく。
けれど、完治というものは容易ではないのだ。
治る兆しどころか、日に日に症状は酷くなっていっている。
ここのところ、さっちゃんが表に出てくる頻度が増えた。
これは私だけの特殊な症状らしいんだけど、
さっちゃんが表に出てくる前後で、必ず過去のトラウマがフラッシュバックする。
それによって脳が大きなショックを受けて、気絶する。
「それは紗綾がそう感じてるだけかもしれない」
「どういうこと?」
「病気になった理由を思い出せなくても、治療を続けている。夜に外へ出てしまうこともある。でも、こうして俺に自分の気持ちを話せている」
それだけで十分成長している――。
四宮せんせーはいつだって、私のことを褒めてくれるんだ。
「それは、何も変わっていない人にはできないことだよ」
だから紗綾ちゃんは変われている。
四宮せんせー、私いつも嬉しいんだよ。
せんせーが私のことを褒めてくれて、慰めてくれて。
でも、その時の喜びをいつの間にか忘れちゃってるんだ。
これだけは、さっちゃんが出てきたからじゃない。
私自身の病気が進行してる証拠。
精神病とは言え、ちゃんと病気は私の身体を蝕んでるから。



