「李仁が心配していた」
「え、あいつが?」
「紗綾ちゃんは李仁の目の前で倒れたんだ。誰だって、目の前で人が倒れたら困惑する」
じゃあ、私が倒れた時に傍にいたのも、
助けを呼んでくれたのもあいつ?
「なんか⋯負けた気分」
なんでだよって四宮せんせーは言うけど、
遊びに誘ったのは私なのに遊んだことは何も覚えてない。
挙句の果てにぶっ倒れて心配させた挙句、助けられてしまった。
「嫌いな奴に助けられるとか⋯⋯」
ほんと、嫌になる。
「ねぇ、せんせー」
私って、なんで生きているんだろうね。
過去にめちゃくちゃ嫌なことがあって、自分を守るために精神病を患ってさ。
原因、覚えてないけど。
それって、入院してからこの二年間、
一度も親が見舞いに来てくれていないのと関係してるよね。
私、まだ中学生だけどさ、
馬鹿じゃないんだよ。
「死にたいわけじゃないんだ。かと言って、生きていたいわけでもない。ただ、何処か遠くに行きたいなぁ」
どうして私の病室からは中庭が見えないんだろう。
窓の外にあるのは転落防止の鉄柵だけ。
そんなもの付けないでよって入院したての時は思ってたけど、
今の私なら、すぐ飛び降りていたかも。
鉄柵があるから私は死ぬにも死ねないんだ。
「……それは、『消えたい』っていうのとは少し違うのかもしれないな」
「……え?」
「今いる場所から離れたい。でも、自分自身まで失くしたいわけじゃない⋯⋯違うか?」
私は少し考えてから、首を横に振った。
「……分かんない」
「うん。それでいい」
そう言って笑った四宮せんせーは、いつものように頭を撫でてくれた。



