いつだって絶望するのは、目が覚めて真っ白の天井が見えた時だった。
「最悪⋯⋯っ」
また、“さっちゃん”が出てきてしまったらしい。
昨日の朝方に李仁の病室に押しかけて、一緒に遊ぼうと誘ったところまでは覚えているのだが。
そこから先、肝心な遊んだ記憶がごっそりと無くなっている。
十中八九、その頃にはさっちゃんが表に出て、好き勝手していたのだろう。
「お、起きた起きた」
「⋯⋯タケ、ちゃん」
何故か四宮せんせーではなく、タケちゃんが私の顔を覗き込んでいる。
というか、なんだか物凄く身体が重いんですけど⋯⋯。
「ちょっと検査させてもらうぞー。昨日お前は中庭の植物園でぶっ倒れたんだが、そこまでで覚えていることは?」
「⋯⋯ない」
「思い出せることだけでいい。何か教えてくれ」
「李仁、の病室に行って⋯⋯遊ぼうって言った後からは、何も⋯⋯⋯ああ、でも⋯植物園で一瞬頭が痛くなった気がする」
「李仁⋯⋯ああ、旭の弟か。そんだけ分かりゃあいい。旭呼んでくるから、もう少し休んどけよー」
手にしていたカルテかメモに私が言ったことを記録すると、カーテンの向こう側に消えていく。
また外の世界から隔離された私は、ぼんやりと天井を見上げた。
(私、昨日は何をしてたんだろう⋯⋯)
どうしていつもいつも、大事な瞬間に限ってさっちゃんが出てきて、
何も覚えられないんだろう。
「ほんと⋯⋯最悪」
「最悪なのは、俺もだ」
シャッと勢いよくカーテンを開けたのは、軽蔑の眼差しを向ける四宮せんせー。
私は目元を覆っていた腕の隙間から彼を見つめた。
しばしの沈黙の後、四宮せんせーはいつも通りパイプ椅子に座った。



