「⋯⋯っし、誰もいないっ!」
さてさて、今日も今日とて病室を抜け出してやってきたのは⋯⋯。
「なんでてめぇがいんだよ」
生意気ガキ改め、
李仁の病室でーーーーーす!
「わー! ここから中庭丸見えだぁ! 景色良いねー」
「勝手にカーテン開けんな」
「いーじゃん、今日は天気がいい、よ⋯⋯」
別に何が変わったわけじゃないのに。
窓の外から降り注ぐ陽の光に照らされた彼の横顔が、
やけに青白く見えた気がした。
「⋯⋯何」
「ん? んーん、何でもなーい」
気のせいだよ。気のせい気のせい。
「あ、そーだ。ねね、李仁」
「気安く名前呼ぶな」
「いーじゃん。折角天気いいのに本ばっか読んでたらもったいないって!」
「あ! 返せっ!」
年頃の男の子のくせに、病室で本を読んでいるなんてつまらない。
取り上げた本のタイトルを見ても、私にはさっぱりだ。
やっぱり、天気の良い日には外で遊ぶのが一番でしょ!
「りひとっ、そとでいっしょにあそうぼう?」
持つものを失った“りひと”の手を握って、わたしはにっこりと笑う。
いつもは一人で逃げ回っている病院の中を
今はりひとと一緒に歩いている。
「えへへ、たのしーね!」
「なあ、お前⋯⋯何か変だぞ」
「えー? わたし、へんじゃないよ? さっちゃんはさっちゃんなんだからっ」
今日は何処に行こう。
折角だし、
わたしのお気に入りの場所に連れて行ってあげようっと。
中にはね、大きな大きな樹があるの。
その下のベンチに座ると、木陰になっているからとっても涼しいんだ。



