それがなんで、今日入院したばかりのこの生意気ガキの名前を知ってんのさ。
「し、四宮せんせーって⋯⋯永遠の独身じゃなかったの⋯⋯っ!?」
皆言ってたよ。
タケちゃんも、他の看護婦も医者も。
四宮せんせーって顔はいいのに無愛想だから、今まで彼女の一人もいなんだって。
だから、私はせんせーに優しくされる度に、
『四宮先生は遠藤さんのことを妹のように思ってるんだろうね』
って言われるのに。
「どれだけ言い寄ろうが絶対靡かない的な? 絶対に振り返らない孤高の存在的な扱いされてるのに!」
「いや、ちょっと⋯⋯何言ってるんだ?」
「隠しg――ぶぇっふ!!!!」
「ぜったいにベッドに縛り付けてやる」
「それお医者さんが言っちゃ駄目なやつ!」
四宮せんせー、そういうとこだよ。
私、一応患者だからね?
今日はやけに調子が良くて“さっちゃん”は一度も出てきてないし、
幻覚とかフラッシュバックとかないけど。
患者だからね?
どう考えても、拘束して口を塞いでいるのは医者としてヤバいと思うんですけど。
「⋯⋯くっ、ふははっ。お兄、何してんのさ」
わ、笑った。
あの人を射殺さんばかりの眼光で睨みつけていた奴が、
あのクッソ生意気なガキが笑って。
って、いやいや。
「お兄って⋯⋯まさか」
二人って兄弟⋯⋯⋯!?
「こいつは俺の弟だよ」
「お、OTOUTODESUKA⋯⋯」
世間って狭いんだねぇ。
二年前からカウンセリングをしてくれてる担当医の弟が、
昨晩、人気のない歩道橋の上でギターを弾いていた不審者って。



