でもね。
私はせんせーのことを先生としか見ていない。
だって、せんせーだって私のことをたくさんいる担当患者の内の一人だと思ってるから。
「病院の敷地内なら、君が外にいても何かあれば助けに行ける。けれど、俺達でも知らない病院の外に行って、そこで発作でも起こってみれば⋯⋯」
四宮せんせーは、あえてその先の言葉を濁した。
「⋯⋯ごめん、せんせー」
それでもせんせーが言わんとすることを察してしまって、
私は情けなくも謝ることしかできない。
すると、
またいつものように四宮せんせーは私の頭の上に手を置いた。
「せ、せんせーっ!?」
あれ、なんかいつもと違う。
めちゃくちゃ撫で回されてる⋯⋯。
「これに懲りたら、もう脱走なんて考えるなよ」
これまでに何人もの看護婦を落としてきたのであろう笑顔を残し、
四宮せんせーは颯爽と病室を出ていった。
残された私はというと⋯⋯。
「⋯⋯って言われても、すること無いしねっ!」
ベッドから飛び降りて病室を飛び出す。
四宮せんせーの話を聞いていなかったわけじゃない。
でも、だからってベッドの上で大人しく寝ているような人間ではないのだよ。
解離性障害を発症する前の私は、
男子と一緒に外でサッカーをしているような子供だったんだから。
「今日は何処に行こうかなー。小児病棟とかで子供達に会いに行こうかなー」
そんな事を考えながら廊下を歩いている時。
「⋯⋯い⋯⋯。すみません。これからお世話になります」
何処からか、やけに内気な女性の声が聞こえてきた。



