ありがとう。大嫌い。



その不協和音を奏でている張本人は、歩道橋の手すりに背を預けるようにして座っていた。


膝の上には、少し年季の入ったアコースティックギター。


街灯に照らされた横顔は、同い年くらいに見える。




こんな時間に、こんな場所で。

しかも、こんなに下手なギターを弾いている。



「下手だね」



これはさっちゃんが言った言葉ではない。


紛れもない紗綾(わたし)が言った言葉だ。



「⋯⋯⋯は?」



その人影はゆっくりと顔を上げて、深く被ったフードの中から私を睨みつけた。


やっば。目つき悪。


夜の古びた歩道橋に座り込んでギターを弾いているだけでやばい人なのに。

そんな人を殺すような眼光をしていたら不審者だよ。



「何、お前」

「いや⋯⋯下手なギターが聞こえてきたから、つい」

「じゃあ聞かなかったら?」



はあ?

なんなのコイツ!!!!


私より年下のくせに。いや、まだ分からないけど。


でも、薄い雲の隙間から覗く月明かりに照らされたその顔は、十二、三歳にしか見えない。


いわゆる童顔ってやつ?


「……感じ悪」

「お互い様だろ」

「私は普通に話しかけただけじゃん」

「いきなり人のギターを下手って言う奴が?」

「だって本当に下手だったし」



これは嘘じゃない。

れっきとした事実だ。



「……お前、喧嘩売ってんの?」

「売ってない。感想」

「もっと悪いわ」



少年は呆れたように溜息を吐く。

そのままギターをケースにしまおうとするから、私は慌てて口を開いた。



「え、ちょっと待って」

「何」

「もう弾かないの?」

「下手なんだろ?」

「……それはそうだけど」

「じゃあ聞くなよ」

「でも、歌は聴いてみたい」

「……は?」