箱入り娘は無感情ボディーガードに護られたい

 すると、今度は女子達のグループがニヤニヤしながら動き出した。

「よし、主役の片方は決まり。じゃあ、その王子様に助けられる姫役は?」

 その瞬間。教室中の皆の視線が、一点へと急激に集束した。たった一人、窓際の中央に座る少女の元へ。

「新那さん」
「だよね、新那さんしかいないでしょ」
「絶対新那さん!  ビジュアル完璧じゃん!」
「っていうか、二人が並んだらマジでお似合いだし!」
「――えっ!?ま、待って待って待って!」

 新那はガタッと椅子を鳴らして勢いよく立ち上がった。

「なんで私!?」
「なんでって、可愛いからに決まってんじゃん」
「そ、それだけの理由!?」
「ヒロインなんだから、それだけで十分だろ」

 男子達からも次々と同意のガヤが飛ぶ。新那の顔は、みるみるうちに浴衣の夜以上に真っ赤に染まっていった。

「む、無理だよ、私なんか……!」
「いけるいける!」
「舞台上での神条コンビのツーショット、マジで見たい!」
「写真撮りまくるわ!」
「もう、揶揄わないでってば!」

 恥ずかしさのあまりパニックになる新那の姿に、教室は再び大爆笑に包まれる。
 新那は助けを求めるように、縋るような思いで後ろの席を振り返った。
 零。
 本人は、至って真面目な顔をして黒板を見つめていた。だが、新那の視線に気づくと、彼はその琥珀色の瞳をゆっくりと新那へと向けた。

「な、何……」

少しだけ身構えながら、消え入りそうな声で聞く。
すると、零は腕を組んだまま少しだけ考えるように視線を落とし、それからごく自然に、淡と言った。

「……お嬢なら、姫役は普通に似合うと思うけどな」

 一瞬の静寂の後、教室が完全に爆発した。

「ギャーーー!  言ったぁぁぁ!」
「神条直々の指名きたこれ!」
「本人公認!  はい、姫役決定!」
「これ以上ないベストカップルじゃん、終了ーーー!」
「いやぁぁぁ、もう皆バカ!」

 新那は真っ赤な顔のまま、逃げるように自分の机に勢いよく突っ伏した。顔どころか、耳の先まで完全に沸騰している。