箱入り娘は無感情ボディーガードに護られたい

 続いて立ち寄った射的の屋台では、莉子が自信満々にプラスチック製のコルク銃を構えていた。

「私のスナイパーとしての才能、とくと目に焼き付けなさい!」

 パン。――外れる。
 パン。――掠りもしない。
 パン。――虚しくコルクが床を転がる。

「なんでぇぇぇ!? 弾が曲がってる、絶対これ銃が曲がってるよ!」
「見事なまでの全弾ノーヒット……」

 新那が隣で呆然と呟き、苦笑いを莉子へと向けた。
 莉子は涙目で銃を引っ込めると、零の浴衣の袖をぐいぐいと引っ張っる。

「もう無理!  敵討ちして、神条君やって!」

 零は無言で銃を受け取った。
 一秒。弾道の風速、重力、コルクの質量を計算。
 二秒。コルク銃固有の銃身の歪みをミリ単位で補正。
 三秒。完璧に狙いを定める。
 そして。
 パン。――最上段の大きなぬいぐるみがガタッと落ちた。
 パン。――二段目のゲーム機型時計が正確に撃ち抜かれる。
 パン。――三段目の箱菓子が綺麗に滑り落ちた。

『えっ』

 莉子も、新那も、そして背後の見物客達も一斉に固まった。
 もちろん、一番驚いているのは奥から飛び出してきた店の店主だった。

「お、お兄ちゃんちょっと待って、タイムタイム!  なんでそんな面白いように落ちるわけ!?」
「銃身の曲がり具合から逆算し、最適な弾道パラメータを計算しました」
「的屋の屋台で物理の計算しないで!!」

 これ以上の景品獲得は営業妨害になりかねないと判断し、出禁寸前でその場を辞した。
 さらに進んだ金魚すくいでは、今度は新那が真剣な面持ちで挑戦した。
 ポイをそっと水に沈め、金魚の動きを読んで、すっとすくい上げる。

「あ、取れた!  莉子ちゃん見て、取れたよ!」
「おおー!  やるじゃん新那ちゃん!」
「可愛い……!」

 お椀の中で小さく尾ひれを振る赤い金魚を見て、新那が少女らしく嬉しそうに声を弾ませる。
 だが、そのすぐ隣では、零が寸分の狂いもない機械的な手付きで、すでに六匹目の出目金を無表情ですくい上げていた。

「ちょっと神条君!  ストップストップ!」
「何だ」
「それは一般人が本気出しちゃ駄目なやつだから!  金魚の絶滅を危惧するレベルだから!」

 その後も、大きな綿菓子を口いっぱいに頬張り、熱々のたこ焼きを「熱い!」と言いながら三分の二ずつ分け合い、チョコバナナのカラフルなトッピングに目を丸くし、かき氷を急いで食べてお互いに頭を抱えて悶絶した。
 気がつけば、三人とも声を上げて笑いっぱなしだった。