廊下の外では、時折誰かの足音が聞こえてくる。
屋敷の中に使用人用の小部屋は幾つかあるが、どれが誰のものというわけではない。
いずれこの部屋に誰かがやって来ても可笑しくはないだろう。
『名付けて! 諦めさせようデート大作戦!!』
しんと辺りが静まり返り、締め切ったカーテンの向こうから、気の抜ける鳥の鳴き声が聞こえてくる。
「もう切るね」
『待てぇ!』
耳の奥キーンとする。思わずスマホを耳から離せば、か細い浬の声が聞こえた。
渋々もう一度耳に当て、溜息混じりに話しに耳を傾ける。
「で、何その月九ドラマのキャッチコピーにありそうな作戦名」
『地味助、お前言うようになったな。火力高くない? ねぇ地味助?』
浬が語った作戦は次の通り。
一、天城家へ嘘の情報を流す。白鷺家の令嬢が天城家以外の他家と関係を持とうとしている情報を流し、天城家側から使者を誘き出す。
二、遠方にナギサを配置し、誘き出した天城家の使者の動向を探らせる。
三、デート中の二人を天城家、主に朔春に見せつける。
というもの。
「そんなに上手く釣れるかな……。朔春さん、結構警戒心強そうだし」
『黒の書架と呼ばれる佐倉家を見くびってもらっちゃあ困るな。天城家が何を求めて、何を恐れるのか。それらをこっちはすぐに暴けんだよ』
「それを逆手に取るって?」
『御名答。まあ、お前の言う通り、絶対に釣れるっている確証はねぇけど』
「でも、やるしかない、だね」
今は婚約を破断させることだけを考えればいい。そのための作戦があるのなら、乗らない選択肢はないだろう。
「ああ、でも。僕潜伏とか苦手なんだけど」
『地味助が何言ってんだよ。お前普通に立ってるだけでも影薄いから大丈夫だって』
「佐倉君の方が火力高いよ? 分かってる?」
作戦に対する懸念も、これからに対する心配もたくさんある。
それでも、ミアからはもちろんイツキにすら頼まれてしまったのだ。
この婚約を破断させられなければ、きっと白鷺家でのナギサの立場は無くなってしまう。
否、白鷺家にはいられるだろうか。雇ったのはケイゾウであり、ケイゾウはミアと朔春の結婚を望んでいる。
破断が失敗すれば、ケイゾウにとっては好都合だ。ナギサを追い出す理由はない。
となれば、ナギサの立場はどうなるか。
ミアの専属執事から外れ、辞めていった執事の八人目になってしまう。
(そんなのは御免だ)
自分で専属執事を終わらせる。死ぬまで仕えたら、一生辞めた八人目の執事は生まれないのだから。
屋敷の中に使用人用の小部屋は幾つかあるが、どれが誰のものというわけではない。
いずれこの部屋に誰かがやって来ても可笑しくはないだろう。
『名付けて! 諦めさせようデート大作戦!!』
しんと辺りが静まり返り、締め切ったカーテンの向こうから、気の抜ける鳥の鳴き声が聞こえてくる。
「もう切るね」
『待てぇ!』
耳の奥キーンとする。思わずスマホを耳から離せば、か細い浬の声が聞こえた。
渋々もう一度耳に当て、溜息混じりに話しに耳を傾ける。
「で、何その月九ドラマのキャッチコピーにありそうな作戦名」
『地味助、お前言うようになったな。火力高くない? ねぇ地味助?』
浬が語った作戦は次の通り。
一、天城家へ嘘の情報を流す。白鷺家の令嬢が天城家以外の他家と関係を持とうとしている情報を流し、天城家側から使者を誘き出す。
二、遠方にナギサを配置し、誘き出した天城家の使者の動向を探らせる。
三、デート中の二人を天城家、主に朔春に見せつける。
というもの。
「そんなに上手く釣れるかな……。朔春さん、結構警戒心強そうだし」
『黒の書架と呼ばれる佐倉家を見くびってもらっちゃあ困るな。天城家が何を求めて、何を恐れるのか。それらをこっちはすぐに暴けんだよ』
「それを逆手に取るって?」
『御名答。まあ、お前の言う通り、絶対に釣れるっている確証はねぇけど』
「でも、やるしかない、だね」
今は婚約を破断させることだけを考えればいい。そのための作戦があるのなら、乗らない選択肢はないだろう。
「ああ、でも。僕潜伏とか苦手なんだけど」
『地味助が何言ってんだよ。お前普通に立ってるだけでも影薄いから大丈夫だって』
「佐倉君の方が火力高いよ? 分かってる?」
作戦に対する懸念も、これからに対する心配もたくさんある。
それでも、ミアからはもちろんイツキにすら頼まれてしまったのだ。
この婚約を破断させられなければ、きっと白鷺家でのナギサの立場は無くなってしまう。
否、白鷺家にはいられるだろうか。雇ったのはケイゾウであり、ケイゾウはミアと朔春の結婚を望んでいる。
破断が失敗すれば、ケイゾウにとっては好都合だ。ナギサを追い出す理由はない。
となれば、ナギサの立場はどうなるか。
ミアの専属執事から外れ、辞めていった執事の八人目になってしまう。
(そんなのは御免だ)
自分で専属執事を終わらせる。死ぬまで仕えたら、一生辞めた八人目の執事は生まれないのだから。



