「……ふっ、ふふふ。あはは!」
「な、なんで笑うんですかっ!?」
笑っている姿を見ると、年相応の少女にしか見えない。
好きな苺を美味しそうに食べて、また辞めていってしまうのではないかと不安になって、安心したら無邪気に笑って。
(嗚呼、やっぱり似てるな。“あの子”と)
名前も思い出せない人とミアを重ねるなんてどうかしている。
それなのに、笑う姿が重なってしまうのは、ナギサにはどうにもすることができないことであった。
「ごめんなさい。まさか出会って二日であんたにそんなことを言われるなんて思わなくて」
「ナギサ君、かっこいいです!」
何の話をしているのか終始理解できていない様子だったルナに言われてしまうと、どうにも調子が狂う。
「ナギサ。あんたも食べなさい」
「えっ? い、いや、僕は遠慮しとくって……て、今名前!」
「好きなものは誰かと共有したい。そう思うのは普通でしょう?」
「この苺は一味違うんです! 食べないと損ですよ!」
苺が入った小皿を差し出しながら、ミアは穏やかな笑みを浮かべた。
きっと、出会った時に突き放すような態度を取ったのは、ただ不安だっただけ。
またナギサもこれまでに辞めた七人の執事と同じ様に自分に嫌気が差して辞めてしまうと。
そんなことはないとナギサの口から聞けたから、ようやく笑えたのだ。
「じゃあ、お言葉に甘えて……う、うまっ!」
「だから言ったのに。もうお腹いっぱいだからあんた達にあげる」
こんなにも甘くて大きい苺を日常的に食べられるミアには、カップ麺ばかりを啜って生きてきたナギサの暮らしは耐えられないのだろう。
辞めていった七人の執事の中には、この裕福な暮らしに目がくらんだものもきっといる。
イツキのように、純粋な忠誠心の下で仕える執事なんてほとんどいないに等しいのだ。
「私ね、ずっと待っていたのよ。この籠の中から救い出してくれる人を」
「何か言いましたか?」
「ううん。何でもない」
「えー、ルナも気になりますぅ」
何かを誤魔化した。
そう気づくには十分すぎるほどの違和感が垣間見える。
「だから、何も言っていないわ。そうだ、牛乳をもってきましょう。苺ミルクが飲みたいわ」
「僕持ってきますよ。厨房にありますよね」
「ええ。どうか気をつけて」
ベッド脇から立ち上がり、部屋を出ようとした時。
不意に背後からそんな言葉が聞こえた気がした。けれど、振り返った時には楽しげに話す二人がいるだけ。
(気の所為だよな。屋敷の中で気をつけろなんて、変な話だ)
自身の良いところは何かと考えると、楽観的なところが取り柄なのかもしれない。
そして、悪いところはすぐに油断するところだ。



