そして、放課後。
「じゃあな藤代、入部届け出すことになったら教えてよ!」
「出すわけねぇだろ、体験だって言ったよな」
特別棟の階段の踊り場で三崎と別れ、凌はさらに上へと足を勧めた。
一歩上るごとに、賑やかな運動部の掛け声や、吹奏楽部が鳴らすバラバラな楽器の音が遠ざかっていく。
四階に辿り着いた時には、廊下は奇妙なほど静まり返っていた。
ふと、西日の差し込む窓際の壁に目が行く。
「おお……すっげ」
そこには、何枚もの絵画が等間隔で飾られていた。
いつもなら一瞥して通り過ぎるはずだった。けれど、何故かその時は無意識の内に足がそこへ向いていた。
廊下の真ん中で絵に向かうように立ち、一枚ずつじっくりと見ていく。
作品名を書いた小さな紙は添えられているが、作者の名前は何処にもない。
絵を描くことは嫌いだ。道具の使い方も分からないし、ぶっちゃけ美術の授業だって苦痛でしかない。中学では美術の成績が一番悪かったはず。
(なんでだ……?)
それなのに、不思議とどれも良い絵だと思った。素人目にも、描いた人間の熱量や、丁寧に重ねられた絵の具の厚みが伝わってくるようだった。
(何かの課題か? 全部似たような場所を描いてるな)
頭の中で色々と考えを巡らせながら見ていた、その時だった。
色鮮やかな周りの作品に埋もれるようにして飾られている、一枚の絵に目が留まる。
「……っ」
その瞬間、凌の足が床に縫い付けられた。
心臓の奥が、ドクンと嫌な音を立てて跳ねる。目が離せない。否、網膜にその光景が焼き付いて、視線を逸らすことすらできなくなった。
他の展示物のような、華やかな色彩も、圧倒的な書き込みもない。
そこに描かれていたのは、ただ――。
「青空」
学校の屋上から描いたのであろう、一枚の『青空の絵』だった。
「じゃあな藤代、入部届け出すことになったら教えてよ!」
「出すわけねぇだろ、体験だって言ったよな」
特別棟の階段の踊り場で三崎と別れ、凌はさらに上へと足を勧めた。
一歩上るごとに、賑やかな運動部の掛け声や、吹奏楽部が鳴らすバラバラな楽器の音が遠ざかっていく。
四階に辿り着いた時には、廊下は奇妙なほど静まり返っていた。
ふと、西日の差し込む窓際の壁に目が行く。
「おお……すっげ」
そこには、何枚もの絵画が等間隔で飾られていた。
いつもなら一瞥して通り過ぎるはずだった。けれど、何故かその時は無意識の内に足がそこへ向いていた。
廊下の真ん中で絵に向かうように立ち、一枚ずつじっくりと見ていく。
作品名を書いた小さな紙は添えられているが、作者の名前は何処にもない。
絵を描くことは嫌いだ。道具の使い方も分からないし、ぶっちゃけ美術の授業だって苦痛でしかない。中学では美術の成績が一番悪かったはず。
(なんでだ……?)
それなのに、不思議とどれも良い絵だと思った。素人目にも、描いた人間の熱量や、丁寧に重ねられた絵の具の厚みが伝わってくるようだった。
(何かの課題か? 全部似たような場所を描いてるな)
頭の中で色々と考えを巡らせながら見ていた、その時だった。
色鮮やかな周りの作品に埋もれるようにして飾られている、一枚の絵に目が留まる。
「……っ」
その瞬間、凌の足が床に縫い付けられた。
心臓の奥が、ドクンと嫌な音を立てて跳ねる。目が離せない。否、網膜にその光景が焼き付いて、視線を逸らすことすらできなくなった。
他の展示物のような、華やかな色彩も、圧倒的な書き込みもない。
そこに描かれていたのは、ただ――。
「青空」
学校の屋上から描いたのであろう、一枚の『青空の絵』だった。



