昼休みの終わりを告げるチャイムが、校舎中に響いた。
廊下にいた生徒達がぞろぞろと教室へ戻っていく。さっきまで静かだった廊下も、足音や話し声で満ちていった。
雨音も凌と並んで歩きながら教室に戻る。
「昼休み終わるの早くない? 全然休みって感じしない」
「廊下で話してたからじゃないかな。私はいつも長いなって思うけど」
「誰かといると時間が経つのが早く感じるってやつか」
「……どういう意味?」
怪訝な表情を浮かべながら問い返すと、凌は曖昧な笑みを浮かべたまま教室の扉を開ける。
ついさっきまで廊下で話していた気がするのに、もう午後の授業が始まる時間だ。
教室に入ると、さっきまで昼食を食べていた机が少しずつ元の形に戻されていくところだった。
弁当箱を片付ける音や、椅子を引く音があちこちから聞こえる。
雨音は自分の席に座り、鞄から教科書を取り出した。
次の授業は数学。黒板の前にはもう先生が来ていて、チョークを持ったまま出席簿を捲っている。
教室のざわめきが、徐々に落ち着いていった。
「はい、席つけー」
先生の声が響くと、クラスメイト達は慌てて自分の席へ戻る。
凌も自分の椅子に腰を下ろした。
「数学かぁ」
机に肘を着きながら、小さく溜息を吐く。いつの間にか身体が前傾姿勢になっていって、寝る準備が始まっていた。
「俺、今日全然分かる気しない」
「……そうなの?」
「てか、数学に関しては理解できたことなーい」
凌は教科書をぱらぱらと捲るけれど、何度も欠伸をしてはその手を止める。
雨音は隣でその様子を見ながら、一抹の不安を感じた。
「この辺、昨日やってたとこ全然理解してない」
そう言って、雨音の机の方へ少し身を乗り出す。
「小森さん分かる?」
とうとう教科書を閉じた凌は、先生が説明を書き連ねる黒板を指さした。
雨音は凌の指先から教科書へと視線を落とし、少しだけ頷く。
「……多分」
「マジ? すご」
その反応に、雨音は少しだけ視線を落とす。
ただ、昨日の授業をそれなりに聞いていただけで、知識は先生が言っていたことを覚えている程度。
何も褒められるようなことなんてないのにと、雨音は曖昧に笑った。
「そんなことないよ」
そう言いながらノートを開き、筆箱からシャーペンを取り出す。
雨音と凌の二人を置いて、教室ではすでに授業が始まっていた。先生が黒板に問題を書きながら説明を始める。
チョークが黒板を走る音が、静かな教室に響いた。
しばらくすると、凌が小さな声で言った。
「なあ」
雨音はノートに黒板に書かれた説明を書きながら、少しだけ顔を向ける。
隣を見れば、ノートすら開かずにぼんやりと黒板を見る凌の横顔が目に入った。
「……何?」
「さっきのぴょん助さ」
「ぴょん助?」
凌は廊下の先の窓を見ながら、小さく囁くような声で言った。
「あの茶色い犬だよ。今日めっちゃ元気だったなー」
「尻尾、千切れるんじゃないかってくらい振ってたね」
その言葉に、雨音は思わず小さく笑った。ぴょんと跳ねて走る犬の姿が、頭の中に浮かぶ。
「また来るかな」
「来るんじゃない? だいたい毎日いるし」
雨音はノートを書きながら、小さく頷いた。
廊下にいた生徒達がぞろぞろと教室へ戻っていく。さっきまで静かだった廊下も、足音や話し声で満ちていった。
雨音も凌と並んで歩きながら教室に戻る。
「昼休み終わるの早くない? 全然休みって感じしない」
「廊下で話してたからじゃないかな。私はいつも長いなって思うけど」
「誰かといると時間が経つのが早く感じるってやつか」
「……どういう意味?」
怪訝な表情を浮かべながら問い返すと、凌は曖昧な笑みを浮かべたまま教室の扉を開ける。
ついさっきまで廊下で話していた気がするのに、もう午後の授業が始まる時間だ。
教室に入ると、さっきまで昼食を食べていた机が少しずつ元の形に戻されていくところだった。
弁当箱を片付ける音や、椅子を引く音があちこちから聞こえる。
雨音は自分の席に座り、鞄から教科書を取り出した。
次の授業は数学。黒板の前にはもう先生が来ていて、チョークを持ったまま出席簿を捲っている。
教室のざわめきが、徐々に落ち着いていった。
「はい、席つけー」
先生の声が響くと、クラスメイト達は慌てて自分の席へ戻る。
凌も自分の椅子に腰を下ろした。
「数学かぁ」
机に肘を着きながら、小さく溜息を吐く。いつの間にか身体が前傾姿勢になっていって、寝る準備が始まっていた。
「俺、今日全然分かる気しない」
「……そうなの?」
「てか、数学に関しては理解できたことなーい」
凌は教科書をぱらぱらと捲るけれど、何度も欠伸をしてはその手を止める。
雨音は隣でその様子を見ながら、一抹の不安を感じた。
「この辺、昨日やってたとこ全然理解してない」
そう言って、雨音の机の方へ少し身を乗り出す。
「小森さん分かる?」
とうとう教科書を閉じた凌は、先生が説明を書き連ねる黒板を指さした。
雨音は凌の指先から教科書へと視線を落とし、少しだけ頷く。
「……多分」
「マジ? すご」
その反応に、雨音は少しだけ視線を落とす。
ただ、昨日の授業をそれなりに聞いていただけで、知識は先生が言っていたことを覚えている程度。
何も褒められるようなことなんてないのにと、雨音は曖昧に笑った。
「そんなことないよ」
そう言いながらノートを開き、筆箱からシャーペンを取り出す。
雨音と凌の二人を置いて、教室ではすでに授業が始まっていた。先生が黒板に問題を書きながら説明を始める。
チョークが黒板を走る音が、静かな教室に響いた。
しばらくすると、凌が小さな声で言った。
「なあ」
雨音はノートに黒板に書かれた説明を書きながら、少しだけ顔を向ける。
隣を見れば、ノートすら開かずにぼんやりと黒板を見る凌の横顔が目に入った。
「……何?」
「さっきのぴょん助さ」
「ぴょん助?」
凌は廊下の先の窓を見ながら、小さく囁くような声で言った。
「あの茶色い犬だよ。今日めっちゃ元気だったなー」
「尻尾、千切れるんじゃないかってくらい振ってたね」
その言葉に、雨音は思わず小さく笑った。ぴょんと跳ねて走る犬の姿が、頭の中に浮かぶ。
「また来るかな」
「来るんじゃない? だいたい毎日いるし」
雨音はノートを書きながら、小さく頷いた。



