こういう時、自分の弱腰な性格が嫌になる。
自分では無理だから誰かに頼ろうとする、自己中心的な考え方をしてしまうのが。
「せーんーせーいー!」
あの時もそうだった。
担任の先生から問題集を職員室にまで運ぶように頼まれて。
職員室にまで来たはいいもの、扉を開けられなくて困っていた時。
一晴は助けてくれた。小さな助けが、雨音を救った。
「ああ! 藤代、すまんすまん。何か用か?」
マイペースな凌にしては珍しい大声が聞こえたかと思うと、奥から中年の男性教師が出てきた。
慌てた様子を見るに、本当に雨音の声は届いていなかったようである。
「これ、羽馬せんの机の上に置いといてくださーい」
「なんだ、藤代が手伝いなんて珍しい」
「俺だって人助けしますからね? そんな薄情な人間じゃないっすからね?」
凌という人間は、他者と関わることをあまり好まない。そう、雨音には見えている。
唯一、一晴やその周りの男子生徒とのみ関わっている印象があった。
だから、そんな一匹狼の凌が雨音の手助けを進んでするなど想像すらできなかったのである。
「小森さん、それ貸して」
「あ、はい。ありがとう、ございます」
「いーよ」
束になったプリントを手渡すと、凌は容赦なく応対する教師にプリントを押し付ける。
すでに凌が渡したプリントで教師の両腕は塞がっていた。
「ちょ、ちょっと待て! 一旦置かせてくれ」
「いやあ、俺達も急いでるんで。じゃ!」
早く行こう、小森さん。
そう笑って言いながら、凌は雨音の背を押して職員室を出る。背後から教師の悲痛な叫びが聞こえていたが、遮断するように扉が閉じられた。
用事を終え、二人は再び職員室を出る。
廊下に戻ると、外から吹き込む風が少しだけ涼しかった。
渡り廊下の向こうには、相変わらず眩しいくらいの青空が広がっている。
凌は窓の外をちらりと見てから、何気ない調子で言った。
「今日も晴れだね」
「……そうですね」
「梅雨も終わりかけだなあ」
「あっという間、ですね」
会話は続いているのに、どこかぎこちない。
雨音はプリントを持っていない手をそっと握り締めながら歩いていた。
自分では無理だから誰かに頼ろうとする、自己中心的な考え方をしてしまうのが。
「せーんーせーいー!」
あの時もそうだった。
担任の先生から問題集を職員室にまで運ぶように頼まれて。
職員室にまで来たはいいもの、扉を開けられなくて困っていた時。
一晴は助けてくれた。小さな助けが、雨音を救った。
「ああ! 藤代、すまんすまん。何か用か?」
マイペースな凌にしては珍しい大声が聞こえたかと思うと、奥から中年の男性教師が出てきた。
慌てた様子を見るに、本当に雨音の声は届いていなかったようである。
「これ、羽馬せんの机の上に置いといてくださーい」
「なんだ、藤代が手伝いなんて珍しい」
「俺だって人助けしますからね? そんな薄情な人間じゃないっすからね?」
凌という人間は、他者と関わることをあまり好まない。そう、雨音には見えている。
唯一、一晴やその周りの男子生徒とのみ関わっている印象があった。
だから、そんな一匹狼の凌が雨音の手助けを進んでするなど想像すらできなかったのである。
「小森さん、それ貸して」
「あ、はい。ありがとう、ございます」
「いーよ」
束になったプリントを手渡すと、凌は容赦なく応対する教師にプリントを押し付ける。
すでに凌が渡したプリントで教師の両腕は塞がっていた。
「ちょ、ちょっと待て! 一旦置かせてくれ」
「いやあ、俺達も急いでるんで。じゃ!」
早く行こう、小森さん。
そう笑って言いながら、凌は雨音の背を押して職員室を出る。背後から教師の悲痛な叫びが聞こえていたが、遮断するように扉が閉じられた。
用事を終え、二人は再び職員室を出る。
廊下に戻ると、外から吹き込む風が少しだけ涼しかった。
渡り廊下の向こうには、相変わらず眩しいくらいの青空が広がっている。
凌は窓の外をちらりと見てから、何気ない調子で言った。
「今日も晴れだね」
「……そうですね」
「梅雨も終わりかけだなあ」
「あっという間、ですね」
会話は続いているのに、どこかぎこちない。
雨音はプリントを持っていない手をそっと握り締めながら歩いていた。



