この気味の悪さを気づけずにいたと言えば嘘になる。
正直言って、江戸で浪士組として集められた時から、この京の街にやってきた時から、嫌な予感はしていた。
京の治安維持のために結成したというのに、清河八郎が実は攘夷志士だったこと。
お上様の言いつけを破ってまで京に留まり、ここまで来てしまったこと。
途中で謎の少女を拾い、どういうわけか自身の小姓として付いて来させたこと。
全部、始めから違和感があった。
(……ここに来てからというのも、何とも気味が悪い。何かいるのか……?)
あれだけ気を引き締めるような事を言っておきながら、今の今まで大きな動きはない。
ただ宵闇が広がる景色を眺めるだけの時間が過ぎているだけだ。
「……トシ。君はどう思っているだろうか」
「近藤さん……?」
「我々は、武士になるためにここまで来た。江戸で剣術を学び、将軍のために戦うと誓った。けれど、それがどうだろうか。今は、刀を抜くこともない。ただ、静かな時間を無情に過ごしているだけではないか」
壬生浪士組の中で、誰よりも武士としての志を持っているのはこの男。
しかし、芹沢や永倉のように武士の家系の出というわけでもなく、のどかな江戸の農村出身である。
武士を目指し、剣術を学んだとて、根にある身分からは逃れならないのだ。
その思いが近藤の志よりももっと奥深くにある不安からありありと感じられた。
「君も気づいているだろう。この警護が“試されている”と」
「…………無理もねぇさ。俺たちゃぁ、荒くれ者の集まりだぜ。剣の腕が立つと自認して集まったとして、将軍様の信頼を得られるわけじゃねぇ」
これだけの時間を要して何も起こらないとなると、無駄口の一つも叩きたくなってしまう。
近藤と土方が小言のように話すのであれば、それを制する者などいない。
だから、二人の“世間話”は途切れることはないのである。
「だったらよ、一つデケェ実績でも積んでみせりゃぁ、お上様も俺達の足元を見るような真似はしねぇだろう」
例えば、御所に出入りする不審者を引っ捕らえる。
脱藩者や倒幕派の浪士であれば、将軍家からしてみれば恐れずとも敵になりうる。
そんな浪士を壬生浪氏組が捕まえれば、それだけで実績となりうるだろう。
「副長」
「……斎藤も気づいたか」
「すでに御所内に侵入しているようです。数は、見張り役が二人」
「主犯がいるな……。チッ、連れってきたらきたで面倒事になってんじゃねぇか」
周囲を見渡し、隣りに立っている近藤に目配せをした土方は、斎藤と沖田を連れて回廊の陰へと向かう。
そこには、案の定、身の程知らずの小姓の姿は見当たらなかった。
正直言って、江戸で浪士組として集められた時から、この京の街にやってきた時から、嫌な予感はしていた。
京の治安維持のために結成したというのに、清河八郎が実は攘夷志士だったこと。
お上様の言いつけを破ってまで京に留まり、ここまで来てしまったこと。
途中で謎の少女を拾い、どういうわけか自身の小姓として付いて来させたこと。
全部、始めから違和感があった。
(……ここに来てからというのも、何とも気味が悪い。何かいるのか……?)
あれだけ気を引き締めるような事を言っておきながら、今の今まで大きな動きはない。
ただ宵闇が広がる景色を眺めるだけの時間が過ぎているだけだ。
「……トシ。君はどう思っているだろうか」
「近藤さん……?」
「我々は、武士になるためにここまで来た。江戸で剣術を学び、将軍のために戦うと誓った。けれど、それがどうだろうか。今は、刀を抜くこともない。ただ、静かな時間を無情に過ごしているだけではないか」
壬生浪士組の中で、誰よりも武士としての志を持っているのはこの男。
しかし、芹沢や永倉のように武士の家系の出というわけでもなく、のどかな江戸の農村出身である。
武士を目指し、剣術を学んだとて、根にある身分からは逃れならないのだ。
その思いが近藤の志よりももっと奥深くにある不安からありありと感じられた。
「君も気づいているだろう。この警護が“試されている”と」
「…………無理もねぇさ。俺たちゃぁ、荒くれ者の集まりだぜ。剣の腕が立つと自認して集まったとして、将軍様の信頼を得られるわけじゃねぇ」
これだけの時間を要して何も起こらないとなると、無駄口の一つも叩きたくなってしまう。
近藤と土方が小言のように話すのであれば、それを制する者などいない。
だから、二人の“世間話”は途切れることはないのである。
「だったらよ、一つデケェ実績でも積んでみせりゃぁ、お上様も俺達の足元を見るような真似はしねぇだろう」
例えば、御所に出入りする不審者を引っ捕らえる。
脱藩者や倒幕派の浪士であれば、将軍家からしてみれば恐れずとも敵になりうる。
そんな浪士を壬生浪氏組が捕まえれば、それだけで実績となりうるだろう。
「副長」
「……斎藤も気づいたか」
「すでに御所内に侵入しているようです。数は、見張り役が二人」
「主犯がいるな……。チッ、連れってきたらきたで面倒事になってんじゃねぇか」
周囲を見渡し、隣りに立っている近藤に目配せをした土方は、斎藤と沖田を連れて回廊の陰へと向かう。
そこには、案の定、身の程知らずの小姓の姿は見当たらなかった。



