この日の京の街は、いつにも増してしんと静まり返っていた。通りに人の姿はまばらで、店の戸は半ば閉められている。行き交う者たちは皆、何かを恐れるように道の端に寄っていた。
一行はそんな街の中を風を切るような速さで進んでいく。
最後尾を駆けていた雪は、荒い息を吐きながら必死に食らいついた。
「にしても………随分と静かだな」
「無理もねぇ。今日ばかりは、都中が息を潜めているんだ」
藤堂がぽつりと零した呟きに永倉が鋭さを宿した低い声で答える。
周囲に視線を配っていた藤堂は、斜め前を歩く永倉へと視線を向けた。浅葱色の羽織を揺らす永倉は、真っ直ぐと前を見据えて振り返ることはない。
代わりに振り返ったのは、先頭で近藤と並んで進んでいた土方であった。
「藤堂、あいつがどっか行かねぇか見張っとけ」
「え、俺が? 土方さんの小姓だろ」
「俺は餓鬼の子守なんざできねぇ。嫌なら総司にでも押し付けとけ」
「いや、だから……これは土方さんの仕事だって………」
なんとか説得を試みようとする藤堂だが、土方の耳には一言も届かない。
最後尾で息を荒げながらも必死についていこうとする雪へと視線を向けた藤堂は、深く長い溜息を吐いた。
「餓鬼って……雪はもう子供って言える年齢じゃねぇだろうが」
「平助のほうがよっぽど子供だよね」
「あ? 総司、てめぇ今なんつった!」
「二人とも、私語は慎みなさい。もうすぐ御前だ」
いつの間に隣にまで来ていたのか、藤堂がぶつぶつと文句をたれていると耳元で沖田の声が聞こえた。
揶揄うために来たのか、それとも偶然か、沖田のことだから前者だろう。
煽られた藤堂が怒りを露わに声を荒げると、土方が鋭く睨めつけ、隣りにいた近藤が冷静に一蹴した。
「……すんませーん」
近藤には叱られ、土方に睨まれ、沖田には煽られた藤堂は視線を下げ肩を落とした。
普段の彼らであれば、こういう場面ではとうに笑いが起きていたことだろう。それがないというのは、やはり皆の間に見えない障壁が潜んでいるからなのかもしれない。
隊の中には再び得の言われぬ緊張が貼り巡り、息をすることすら億劫である。
最後尾にいる雪は何処にいるのか分からない土方の言葉を思い返しながら、歩みを進めた。
一行はそんな街の中を風を切るような速さで進んでいく。
最後尾を駆けていた雪は、荒い息を吐きながら必死に食らいついた。
「にしても………随分と静かだな」
「無理もねぇ。今日ばかりは、都中が息を潜めているんだ」
藤堂がぽつりと零した呟きに永倉が鋭さを宿した低い声で答える。
周囲に視線を配っていた藤堂は、斜め前を歩く永倉へと視線を向けた。浅葱色の羽織を揺らす永倉は、真っ直ぐと前を見据えて振り返ることはない。
代わりに振り返ったのは、先頭で近藤と並んで進んでいた土方であった。
「藤堂、あいつがどっか行かねぇか見張っとけ」
「え、俺が? 土方さんの小姓だろ」
「俺は餓鬼の子守なんざできねぇ。嫌なら総司にでも押し付けとけ」
「いや、だから……これは土方さんの仕事だって………」
なんとか説得を試みようとする藤堂だが、土方の耳には一言も届かない。
最後尾で息を荒げながらも必死についていこうとする雪へと視線を向けた藤堂は、深く長い溜息を吐いた。
「餓鬼って……雪はもう子供って言える年齢じゃねぇだろうが」
「平助のほうがよっぽど子供だよね」
「あ? 総司、てめぇ今なんつった!」
「二人とも、私語は慎みなさい。もうすぐ御前だ」
いつの間に隣にまで来ていたのか、藤堂がぶつぶつと文句をたれていると耳元で沖田の声が聞こえた。
揶揄うために来たのか、それとも偶然か、沖田のことだから前者だろう。
煽られた藤堂が怒りを露わに声を荒げると、土方が鋭く睨めつけ、隣りにいた近藤が冷静に一蹴した。
「……すんませーん」
近藤には叱られ、土方に睨まれ、沖田には煽られた藤堂は視線を下げ肩を落とした。
普段の彼らであれば、こういう場面ではとうに笑いが起きていたことだろう。それがないというのは、やはり皆の間に見えない障壁が潜んでいるからなのかもしれない。
隊の中には再び得の言われぬ緊張が貼り巡り、息をすることすら億劫である。
最後尾にいる雪は何処にいるのか分からない土方の言葉を思い返しながら、歩みを進めた。



