想いと共に花と散る

 何とも言えない張り詰めた空気が見つめ合う二人の間に流れる。
 頭上で睨めつけ合う二人を見上げる雪は、重く伸し掛かる重圧に耐えかねていた。

「さあ、雪君。君から言いなさい」
「え……ええ!?」

 長らく沈黙を続けていた山南は、突然怯える雪を見下ろすと慈悲もなく吐き捨てた。
 てっきり彼の方から話をつけてくれるものだと思っていたため、何の心の準備もしていない。
 山南はすでに言質を取ったと脅さんばかりに肩に手を置いてきた。もう、逃げ場はないようである。

「……なんだ、言いたいことがあるならさっさとしろ」

 久々に土方に目を向けられ、余計に緊張で身体が強張る。
 普段から必要以上のことは口にしない土方だが、態度からは時間がないから早くしろと言いたげであった。
 このまま駄々を捏ねていても時間を無駄にするだけ。それに、すでに山南には宣言してしまった後である。
 自分の発言には責任を持つ。滅多に雪華へ関心を向けない両親が言いつけていた心得だ。

「えっと……その、私もご一緒に………」
「雪君、もっとはっきりと話しなさい」
「す、すみません。えっとですね……私もご同行させてもらいたいなー、なんて」
「……は?」

 先刻、山南に向かって堂々と言い放つなんてことはできず、視線を斜め下に落として言う。
 たっぷり数十秒の間を開けた後、聞こえてきたのは鬼の気の抜けた声であった。

「……山南さん、一体どういう風の吹き回しだ」
「これは本人が決めたことです。私はただ背中を押しただけですよ」

 額に手を添え頭を抱える土方を前にして、山南は正反対に微笑みながら言ってのけた。
 断られるわけがない、そんな自身が山南の態度から伝わってくる。
 雪は、自分はとんでもないことを言ってしまったのかと今更になって後悔し始めていた。

「小姓の仕事はあくまでも主人の傍に仕えること。このまま留守番をしていてもらうのが一番安全ではありますが、目の届かない所に置いておくのは気が引ける。……違いますか?」

 微笑みこそ崩さないが、山南のこの発言には何処か嫌な所に突き刺さる棘を有していた。
 直接言われたわけではない雪が、その発言に後ろ指を指される思いをする。言われた張本人の土方は、みるみる内に険しい表情に変わっていった。