沖田のあの冷たい態度も、いつも以上に苛立った様子の土方も、庭で忙しなく木刀を振るう藤堂も、皆、何処か様子がおかしい。
御所というと、お偉い様がいる場所のことだろう。そんな場所にお呼ばれしたともなれば、皆が不安に思うのも無理はない。
足元に視線を落として考えを巡らせている内に、ことの重大さに気付いた雪は不安に押し潰されそうになった。
「朝廷から長州を引き離して、会津の勢力に入れ替える。つまり、京の政治をまとめて覆す日ということだ。そのために、俺達壬生浪士組が御所の護衛につく。長州が暴れたら止める役目でな」
後頭部を鈍器で殴られたような強い衝撃が襲う。
到底、雪には想像しきれないことが今日という日に起きようとしていた。
微かに身体を震わせる雪をちらりと横目で見た原田は、一段階声音を落として斎藤の言葉に続く。
「刀を抜くことになるかもしれねぇ。今日の京は、一歩間違やぁ戦が転がる、そんな状態だ」
その言葉が聞き捨てならず、勢いよく顔を上げた雪は溢れそうになる不安を飲み込んで原田の顔を睨めつけた。
当たり前のように刀を抜く自体を想定している。そんな彼らの覚悟に似た横暴な一面を雪は信じたくなかったのである。
「危険な真似はしないで────」
「壬生浪士組、諸隊! 至急集合しろ!」
雪の消え入るような声を遮るように、土方の怒号が突如として屯所内に響き渡った。
あまりの勢いに、雪はビクリと身体を震わせて、声が聞こえてきた屯所の入口へと目を向ける。
すぐ傍に座っていた原田は立ち上がると、何を思ったのか今の状況に困惑する雪の頭の上に手を乗せた。
「は、原田さ────」
「……まあ、気を張る必要はねぇさ。お前は土方の野郎の傍に引っ付いときゃいい」
原田はちらりと雪へ視線を向けて短く笑い、頭から手を離す。
去りゆく大きな彼の背中を眺める雪の胸の奥に、再び得体の知れない不安が広がった。
京で大きな動き、先ほど原田が言いかけていた言葉が冷たい風のように脳裏を過る。
「皆、屯所前に整列しろ! 急げ!」
再度、土方の怒号が響き渡り、辺りは忙しない隊士達の足音に満たされる。
雪も慌てて原田と斎藤が向かって行った屯所の前に向かった。
御所というと、お偉い様がいる場所のことだろう。そんな場所にお呼ばれしたともなれば、皆が不安に思うのも無理はない。
足元に視線を落として考えを巡らせている内に、ことの重大さに気付いた雪は不安に押し潰されそうになった。
「朝廷から長州を引き離して、会津の勢力に入れ替える。つまり、京の政治をまとめて覆す日ということだ。そのために、俺達壬生浪士組が御所の護衛につく。長州が暴れたら止める役目でな」
後頭部を鈍器で殴られたような強い衝撃が襲う。
到底、雪には想像しきれないことが今日という日に起きようとしていた。
微かに身体を震わせる雪をちらりと横目で見た原田は、一段階声音を落として斎藤の言葉に続く。
「刀を抜くことになるかもしれねぇ。今日の京は、一歩間違やぁ戦が転がる、そんな状態だ」
その言葉が聞き捨てならず、勢いよく顔を上げた雪は溢れそうになる不安を飲み込んで原田の顔を睨めつけた。
当たり前のように刀を抜く自体を想定している。そんな彼らの覚悟に似た横暴な一面を雪は信じたくなかったのである。
「危険な真似はしないで────」
「壬生浪士組、諸隊! 至急集合しろ!」
雪の消え入るような声を遮るように、土方の怒号が突如として屯所内に響き渡った。
あまりの勢いに、雪はビクリと身体を震わせて、声が聞こえてきた屯所の入口へと目を向ける。
すぐ傍に座っていた原田は立ち上がると、何を思ったのか今の状況に困惑する雪の頭の上に手を乗せた。
「は、原田さ────」
「……まあ、気を張る必要はねぇさ。お前は土方の野郎の傍に引っ付いときゃいい」
原田はちらりと雪へ視線を向けて短く笑い、頭から手を離す。
去りゆく大きな彼の背中を眺める雪の胸の奥に、再び得体の知れない不安が広がった。
京で大きな動き、先ほど原田が言いかけていた言葉が冷たい風のように脳裏を過る。
「皆、屯所前に整列しろ! 急げ!」
再度、土方の怒号が響き渡り、辺りは忙しない隊士達の足音に満たされる。
雪も慌てて原田と斎藤が向かって行った屯所の前に向かった。



