話し終えた山南は、水を張った桶の中に手を入れたままぼんやりと空を見上げた。
雪も釣られて空を見上げる。空は薄い雲が掛かった青空が広がっていた。
「彼は、自由奔放で我が強い。自分のやりたいことをはっきり言うし、気に入らないことがあればすぐに反発する。でも、その裏には、仲間や組織を思う忠誠心もあるんです」
「忠誠心、ですか……?」
山南は小さく頷き、残っていた最後の一枚の衣服を桶の中に沈めた。
バシャバシャと衣服を洗う音を聞き流しながら、雪も抱えていた洗濯物を干す。
ぎこちない少しの間を開けて、消え入るような山南の声が聞こえた。
「芹沢さんの忠義心は、局長や土方君のように理性的で計画的なものとは違う。でも、確かに仲間を思い、守ろうとする気持ちは人一倍です。だから、少々手荒でも彼の行動には意味があるんですよ」
何とも信じ難い話であった。山南から最後の一枚を受け取り干す間、雪は何度も彼の言葉を反芻する。
あの乱暴で酒癖の悪い男が人一倍の忠義心を持っている、なんて信じたくはなかった。
出会ってそうそう髪の毛を掴んでくるような男だ。そんな乱暴な男のいる屯所で、これからも生活しなければならない現実が辛く感じる。
洗濯を終えた後も何処か晴れない顔色をした雪に、山南は静かに語り掛ける。
「雪君、君が彼に怯える必要はありません。君は局長、いえ、土方くんの傍にいたらいい。何かあれば彼が助けてくれます」
「……でも、それでいいんでしょうか………」
「それでいい、とは?」
空になった桶を拾い上げた雪は、依然として張り詰めた空気が流れる屯所に目を向ける。
空は晴れているというのに屯所の空気はどんよりと湿っていた。
「不本意だったとは言え、一度は土方さんに助けられました。……そう何度も助けられてしまってもいいものかと」
たとえ彼らのように刀を握ることはないとしても、ただの雑用係だとしても。
自分の身くらいは自分で守れなくてどうする。
何度も土方やその他の隊士に頼ってばかりいるのは、どうも釈然としない。
「……ふふ」
「や、山南さん?」
「いえ、ふふふ……すみません。まさか君がこんなにも短時間で壬生浪士組に馴染むとは思わなくて」
肩を揺らして必死に笑いを堪えているようだが、ほとんど漏れてしまっている。
怪訝な面持ちで見つめる雪の姿が、山南には年の離れた弟のように思えた。弟が兄のような存在である自分達に遠慮している、その現状が面白かったのだ。
雪も釣られて空を見上げる。空は薄い雲が掛かった青空が広がっていた。
「彼は、自由奔放で我が強い。自分のやりたいことをはっきり言うし、気に入らないことがあればすぐに反発する。でも、その裏には、仲間や組織を思う忠誠心もあるんです」
「忠誠心、ですか……?」
山南は小さく頷き、残っていた最後の一枚の衣服を桶の中に沈めた。
バシャバシャと衣服を洗う音を聞き流しながら、雪も抱えていた洗濯物を干す。
ぎこちない少しの間を開けて、消え入るような山南の声が聞こえた。
「芹沢さんの忠義心は、局長や土方君のように理性的で計画的なものとは違う。でも、確かに仲間を思い、守ろうとする気持ちは人一倍です。だから、少々手荒でも彼の行動には意味があるんですよ」
何とも信じ難い話であった。山南から最後の一枚を受け取り干す間、雪は何度も彼の言葉を反芻する。
あの乱暴で酒癖の悪い男が人一倍の忠義心を持っている、なんて信じたくはなかった。
出会ってそうそう髪の毛を掴んでくるような男だ。そんな乱暴な男のいる屯所で、これからも生活しなければならない現実が辛く感じる。
洗濯を終えた後も何処か晴れない顔色をした雪に、山南は静かに語り掛ける。
「雪君、君が彼に怯える必要はありません。君は局長、いえ、土方くんの傍にいたらいい。何かあれば彼が助けてくれます」
「……でも、それでいいんでしょうか………」
「それでいい、とは?」
空になった桶を拾い上げた雪は、依然として張り詰めた空気が流れる屯所に目を向ける。
空は晴れているというのに屯所の空気はどんよりと湿っていた。
「不本意だったとは言え、一度は土方さんに助けられました。……そう何度も助けられてしまってもいいものかと」
たとえ彼らのように刀を握ることはないとしても、ただの雑用係だとしても。
自分の身くらいは自分で守れなくてどうする。
何度も土方やその他の隊士に頼ってばかりいるのは、どうも釈然としない。
「……ふふ」
「や、山南さん?」
「いえ、ふふふ……すみません。まさか君がこんなにも短時間で壬生浪士組に馴染むとは思わなくて」
肩を揺らして必死に笑いを堪えているようだが、ほとんど漏れてしまっている。
怪訝な面持ちで見つめる雪の姿が、山南には年の離れた弟のように思えた。弟が兄のような存在である自分達に遠慮している、その現状が面白かったのだ。



