想いと共に花と散る

 隊士のほとんどは清河に従い、倒幕の道へ進もうと江戸へと戻っていく。
 そんな中、清河の言葉に反発し京に残ることを決意する者達がいた。

「我々は武士として、幕府に仕え働くために来たんだろう」

 近藤勇が代表して主張し、土方や沖田、永倉ら百姓出身の者達を中心に京・壬生に残留する道を選んだ。
 彼らは会津藩に直訴し、容保から認められる形で壬生浪士組となる。
 京の治安維持のために。
 武士としての立場を得るために。
 何より己の道を貫くために。

「これが、壬生浪士組の始まりです」

 そう話を締めくくった山南は、全ての衣服を拾い終え山積みの桶を抱えて立ち上がる。
 雪も慌てて立ち上がり、彼の傍に寄った。桶を受け取ろうと手を伸ばすと、笑顔で止められてしまう。

「続きは洗濯しながらにしましょう。早く終わらせなければ、土方君に怒られてしまう。二人でやれば早く終わりますしね」
「あ、ありがとうございます」

 井戸端に移動した二人は、手分けして大量の衣服を洗い始める。
 一枚を洗うのだけでもかなりの気力を要する。それを大量に洗うとなるのだから、山南の助力はありがたかった。

「では、次は芹沢さんについてお話しましょうか」

 山南が洗った衣服を雪が受け取り、物干し竿に通して等間隔に干していく。
 二人の間に微妙な距離感が生まれるのは、出会ったばかりでまだ完全に打ち解けていないからか。
 それとも、これからあの横暴な黒羽織の男について語って聞かされるからか。
 隊士達の大きな着物を干しながら、雪は静かに山南の話に耳を傾けた。

「彼の名は芹沢鴨。神道無念流の剣術に優れ、理由は違えど我々と同じく浪士組としてこの京の街に来ました。雪君が言った通り、横暴で酒癖が悪く、夜に飲みに出て朝帰りなんて当たり前。カッとなればすぐに手が出るので、常日頃あちこちで問題を起こすような人です。けれど、彼はただ横暴というわけではない」
「……それは、どういう………」
「御上様の言いつけに反抗してまで京に残った当初の我々は、酷い資金難に悩まされました。この貧乏な壬生浪士組をここまで維持できたのは、彼のおかげなのです。資金集めや面倒な交渉を、彼が全て引き受けてくれたからこそ、我々は京都に残ることができたんです」

 一見、芹沢のことを褒めているように聞こえる話だが、山南の表情を見ていると到底そうは思えない。