想いと共に花と散る

 彼らがこちらへ近づいてくる。ここで振り返らず逃げ出すほうが、返って彼らに不信感を与えてしまうだろう。
 自分より歳も背丈も上回る男達に迫られるというのは、こんなにも恐ろしいのか。
 カタカタと身体を震わせながら振り返った雪は、すぐ目の前にまで迫っていた彼らの顔を恐怖に歪む顔で見上げた。

「土方さんの小姓だよ」

 品定めをするように雪を見つめる二人の背後から沖田が助け舟を出す。
 彼ら口を開いたことで、二人の意識は沖田の方へと向けられた。
 その隙を見計らって沖田と藤堂の背後へと逃げ込む。壬生浪士組の中で信頼できるのはこの二人であった。
 沖田の言葉を聞いた二人は、ぽかんと口を開けて固まる。赤髪の男なんて持っていた木刀をその場に落としてしまった。

「は……え、今……こ、小姓って言った?」
「誰の小姓だって……?」
「土方さん」
「いや、いやいや、嘘はよせよ。こんな小っせぇのが歳さんの小姓だと?」

 ニコニコと微笑んだまま「そうだよ」と言ってのける沖田に二人は呆気に取られてしまった。
 初めて沖田と藤堂に出会った時に彼らも戸惑っている様子であったから、やはりこの二人の反応も正しい。
 余計に近藤と土方が一線を逸脱した存在であることが知らしめられる。

「雪、二人はこんなだけど悪い奴じゃない。話せばきっと分かるよ」

 見下ろす沖田の表情は、嘘偽りのない微笑みで満たされている。
 いつの間にか、彼が言うのなら本当なのだろうと思うようになっていた。
 隣で笑っている藤堂も同じ思いのようである。彼らが信じている相手なのならば、きっと分かり合える。

「……え、えっと………今日から土方さんの小姓になりました。結城雪と言います」

 一歩前に出てペコリと頭を下げる。前に出る時に沖田が優しく背中を押してくれたおかげですんなりと言葉が出た。
 恐る恐る顔を上げると、ぽかんと口を開けていた二人は慌てて姿勢を正す。

「お、おう……。ああ、申し遅れた。俺は永倉新八」
「原田左之助だ」

 尖った無造作な茶髪の男が永倉。赤髪の大男が原田。
 こうしてまた壬生浪士組の仲間が増えた。太陽のように眩しい笑顔を浮かべる二人を見て、自然と雪の顔にも笑みが浮かんだ。