想いと共に花と散る

 左右に立っている沖田と藤堂の顔色を伺うと、二人とも同じように笑みを浮かべている。
 彼らの常識とは逸脱した、人斬り集団としての圧力が痛いほどに伸し掛かってきた。

「ね、ねぇ……毎日こんなことしてるの?」
「ん? そーだけど」

 なんてことのないように言う藤堂は、腰に手を当て楽しげに笑う。彼の言葉を聞いた雪は絶句するしかなかった。
 二人の斬り結びはさらに速度を増し、木刀が空気を裂くたびに雪の心臓は跳ねる。
 茶髪の男の目が鋭く光り、赤髪の男の唸り声が迸る。
 圧倒するような緊張感が庭全体を包み込み、そして再び彼らの剣は交ろうとした。

「はい、そこまでー」

 ぱん、と軽く掌を叩く音が裏庭に響いた。
 だがその小さな音が、嘘みたいに二人の動きを止める。睨めつけあったまま、二人は木刀を握ったままピタリと動きを止めた。
 張り詰めた糸が切れたように、裏庭の空気が一気に緩む。
 先に動いた茶髪の男は、木刀を肩に乗せ僅かに息を整えた。赤髪の男も荒い呼吸のまま木刀を下げる。

「……チッ、もう少しで当たってたのによ」
「当たるかよ。お前のは大振りすぎる」

 それまで漂っていた緊張感と剣圧は見る影もなくなり、どういうわけか和やかな雰囲気に包まれている。
 観戦していた隊士達は、「風呂だー!」とかなんとか呑気な事を言いながら雪達の横を通り過ぎていく。
 裏庭に残ったのは、雪達と先程まで決闘していた二人の男である。

「二人とも気は済んだ?」

 穏やかな微笑みを浮かべた沖田が二人に問う。
 問われた二人は雪達の方に振り返り、何処か満足しきれていない微妙な表情を浮かべた。

「総司、いいところだっただろうが」
「今何時だと思っているのさ。そろそろ夕餉の時間だよ」
「そーだぜ。新ぱっつぁんも左之さんも早く風呂いけよ!」

 沖田と藤堂は雪の傍から離れて二人の元へと向かっていく。
 再び取り残された雪は、慣れ親しんだ様子で話し出す彼らの様子を眺めた。
 雪が彼らの会話に混ざることなどできるはずなどない。この場に自分は必要ないと感じて、雪は裏庭から出ようとする。

「なあ、ずっと気になってたんだけどよ。あの餓鬼誰だ?」

 背後から赤髪の男の低い声に呼び止められる。気配を消してこの場から逃げ出そうと試みたが、呆気なく捕まってしまった。