想いと共に花と散る

 日が暮れ、甘味処を出た三人は、壬生浪士組の屯所への帰路についた。
 今の雪は袴を着て京の町に馴染んでいる。沖田と藤堂と並んで歩いていても、何ら違和感はない。
 その違和感を感じないことが、いよいよ彼らの仲間入りをしたという現実を知らしめていた。

(袴を着ただけで男の子のフリをできるかは分からないけど……今更後戻りなんてできないよね)

 土方の小姓として壬生浪士組に身を置くことを提案したのは近藤だが、その提案を受け入れたのは雪自身。
 ならば、役目を終えるその日まで全力で駆け抜けるだけだ。
 彼らと共にいるというのは、元の時代で周りにいいように使われ、舐められてきた哀れな少女を殺すための手段なのである。
 結城雪は、誰にも舐められず必要とされる人間になることを望んだ。
 彼らと共にいれば、その望みを叶えられると信じて。

「雪。立ち止まっていないで、早く帰ろう」
「そうだぜ。急がねぇと、土方さんに怒られちまうって」

 焼き付けた夕焼けが広がる空の下、夕日を背にした二人の笑顔が輝いて見えた。
 たとえこの時代の人間ではないとしても、彼らのように強い精神と肉体はないとしても、正体を隠して生きていかなくてはならないとしても。
 二人の笑顔を見た雪は、彼らの仲間になりたい、そう強く思った。

「うん!」

 当たり前のように帰ろうと言ってくれる。
 同じ場所へ共に帰ることができる。
 歳も性別も関係なく、二人は雪を雪として見てくれるのだ。

「あっ! 折角甘味食べたんだから、近藤さんにお土産買って行けばよかった」
「近藤さんも甘いもの好きなの?」
「好きっつーか、買ってかねぇと拗ねちまうんだよな。『どうして俺の分はないんだ! お前達だけなんてずるい』って」
「あははっ。近藤さんて意外と子供っぽいんだね」

 気が付けば、雪は二人の手を握って歩いていた。
 生きる時代も生まれた場所も、年齢も性別も何もかもが違う三人。
 それでも並んで歩けば自然と笑顔になる。くだらない話で一緒に笑える。
 元の時代にいた頃では絶対に味わうことのできなかった時間。誰かと一緒に笑うことはこんなにも楽しいのだと。
 雪は密かにその幸せを噛み締めて笑った。