想いと共に花と散る

 呉服屋を出た三人は、太陽がすっかり昇った京の下町を並んで歩いた。
 屋敷を出た時は大きく開いていた彼らとの距離も、今では横並びで歩けるほどに縮まっている。
 どういうわけか、二人の間にいると心が落ち着いた。心地よい、と感じているのだろう。

「ねえ、平助。今日って手控えの日だよね」
「おう、そのはずだけど」
「ならさ、折角だし、あそこの甘味処寄ろうよ」

 やけに目を輝かして言う沖田の視線の先には、一軒の小さな甘味処がある。
 誘われるようにして甘味処へと向かった三人は、店先の長椅子に並んで座った。
 ホッと一息ついた時、一人の少女が三人の前に現れる。柔らかな栗色の髪を後ろでまとめた、雪と同年代くらいの少女だ。にこやかな笑顔が印象的である。

「沖田君、藤堂君。いらっしゃい!」
「やあ、お邪魔してますー」
「あれ? あれあれあれ? その子誰? 二人して女の子連れ回して何してたんー?」

 ここは沖田の行きつけの甘味処であるらしく、看板娘らしき少女はやけに慣れ親しんだ様子で話し掛けてきた。
 笑みを浮かべて近寄ってきた少女は、沖田と藤堂の間に座っている雪を見て一層笑みを深める。
 
「おい、ニヤニヤすんな。色々と訳アリなんだよ」
「何やのそれ。怪しいなぁ」
「まあまあ、そのくらいにしてよ。あれこれ詮索する前に注文させて」
「はぁーい。いつものでええ? 三人分用意してくるわ」

 少女は品定めをするように雪を見た後、沖田に窘められて渋々店の中に入っていった。
 突然のことに雪は驚き石のように固まる。隣に座っていた沖田は、足元に視線を落として深く溜息を吐いた。
 少しすると先程の少女がお盆を持って再び三人へと近づく。お盆の上には三人分の甘味と湯呑みが載っていた。

「はい、おまたせしました。みたらし団子でーす」
「わあ……キラキラしてる………」
 
 少女からみたらし団子を受け取った雪は、太陽の光を受けて輝きを放つ醤油のタレに見入った。
 香ばしい香りに食欲を唆られ、さっそく手に取るとぱくりと一つ口に入れる。
 甘辛い味に団子の弾力のある食感が何とも楽しい。団子自体は元の時代にもあるが、実際に口にするのはこれが初めてであった。