雪の答えを聞いた藤堂は、目に見えて表情を晴れさせる。傍らに立っていた沖田も何処か嬉しげだ。
よほど嬉しかったのか、藤堂は満面の笑みを浮かべて年配の店主の方を振り向く。
「おやっさん。着物も何着か見せてくれ」
「は、はあ。ちょいとお待ちくだせぇ……」
今の雪達は、年配の店主には相当怪しく見えているだろう。
年頃の女子に男物の袴を着せようとする男が二人いたり、かと思えば女物の着物を見せてくれと言ってきたり。
それでも年配の店主はしばらくした後、いくつかの着物を手にして戻ってきた。
並べられたのは、桜色、薄紅色、淡藤色、若草色の四着の着物である。
店を出ようとしていた雪と沖田は、誘われるように年配の店主の元へと行く。藤堂も二人の間から並べられた着物を見た。
「随分と落ち着いた色の着物だ」
時に手に取ってその質感を確かめながら、沖田は誰に向けてでもなく呟く。
彼の呟きに雪も密かに共感した。どれも落ち着いた色合いで、店内に飾られている他の派手な品物よりも雪華の目を引く。
「どれになさいましょう。お嬢さんは大人っぽい雰囲気したはりますし、この薄藤色なんかが似合うんじゃぁないでしょうかね」
「薄紅色もいいと思うけどな。地味すぎず派手すぎずって感じで」
前と後ろから色々と意見を飛ばされるが、雪の意識は一着へと向けられていた。
雪の視線の先にあるのは、あまり目立たない桜色の着物である。目の前にある桜色の着物に、無意識に心惹かれたのだ。沖田と藤堂には、食い入るように見つめる雪のそんな姿が異様に見えた。
「……これがいい。この色がいいです」
桜色の着物を指し示しながら言うと、年配の店員は柔らかい微笑みを浮かべて頷く。
「ええと思います。お嬢さんの優しそうな笑顔に、よう合うてる」
似ていると思ったのだ。祖父母の家の庭に植わっている桜が、春になって満開になった様に。
ただそれだけが決め手であったため、年配の店主が言った言葉は雪には聞こえていない。
沖田と藤堂がこれまで以上に雪を優しく見守っていることにもまた、雪は気付かないままであった。
「こちらも買わせてもらいます」
「おおきに。いつかこの着物を着た姿を見せてくださいな」
「はい!」
年配の店員は丁寧に桜色の着物を包んでくれる。包まれた着物を受け取った雪は、誰にも初めて見せる満面の笑みを見せた。
よほど嬉しかったのか、藤堂は満面の笑みを浮かべて年配の店主の方を振り向く。
「おやっさん。着物も何着か見せてくれ」
「は、はあ。ちょいとお待ちくだせぇ……」
今の雪達は、年配の店主には相当怪しく見えているだろう。
年頃の女子に男物の袴を着せようとする男が二人いたり、かと思えば女物の着物を見せてくれと言ってきたり。
それでも年配の店主はしばらくした後、いくつかの着物を手にして戻ってきた。
並べられたのは、桜色、薄紅色、淡藤色、若草色の四着の着物である。
店を出ようとしていた雪と沖田は、誘われるように年配の店主の元へと行く。藤堂も二人の間から並べられた着物を見た。
「随分と落ち着いた色の着物だ」
時に手に取ってその質感を確かめながら、沖田は誰に向けてでもなく呟く。
彼の呟きに雪も密かに共感した。どれも落ち着いた色合いで、店内に飾られている他の派手な品物よりも雪華の目を引く。
「どれになさいましょう。お嬢さんは大人っぽい雰囲気したはりますし、この薄藤色なんかが似合うんじゃぁないでしょうかね」
「薄紅色もいいと思うけどな。地味すぎず派手すぎずって感じで」
前と後ろから色々と意見を飛ばされるが、雪の意識は一着へと向けられていた。
雪の視線の先にあるのは、あまり目立たない桜色の着物である。目の前にある桜色の着物に、無意識に心惹かれたのだ。沖田と藤堂には、食い入るように見つめる雪のそんな姿が異様に見えた。
「……これがいい。この色がいいです」
桜色の着物を指し示しながら言うと、年配の店員は柔らかい微笑みを浮かべて頷く。
「ええと思います。お嬢さんの優しそうな笑顔に、よう合うてる」
似ていると思ったのだ。祖父母の家の庭に植わっている桜が、春になって満開になった様に。
ただそれだけが決め手であったため、年配の店主が言った言葉は雪には聞こえていない。
沖田と藤堂がこれまで以上に雪を優しく見守っていることにもまた、雪は気付かないままであった。
「こちらも買わせてもらいます」
「おおきに。いつかこの着物を着た姿を見せてくださいな」
「はい!」
年配の店員は丁寧に桜色の着物を包んでくれる。包まれた着物を受け取った雪は、誰にも初めて見せる満面の笑みを見せた。



