それから三人で他愛もない話をしながら歩いている内に、呉服屋へと辿り着いた。
沖田が扉を開け先に中に入って行く。その後に藤堂が続き、後を追って雪も呉服屋の中へと入る。
ふんわりと乾いた木の香りと、染めた布の匂いが鼻を擽った。初めての感覚に雪は思わず入ってすぐに立ち止まった。
店内は畳敷きで、天井まで積まれた棚に色とりどりの反物が整然と並んでいる。
奥の帳場では、年配の店員が黙々と帳簿をつけており、その手前には袴や着物が折りたたまれて山のように置かれていた。
「あのー、すみませーん」
「はいはい。何かご入用で?」
沖田が声を掛けると、奥の帳場にいた年配の店員が腰を低くしながら出てくる。
辺り一面を埋め尽くす反物に目を奪われる雪をよそに、沖田と藤堂は年配の店員の元へと向かった。
「あそこの彼女に合う袴をいくつか見せてもらえませんか?」
「袴、ですかい? 着物ではなく?」
「はい、袴を」
年配の店員には、年頃の女子に男物の袴を用意しようとする沖田達が怪しげに見えるのだろう。
警戒する年配の店員を相手に沖田は無駄な会話は省き、無言の圧力で押し返す。
年配の店主はそんな沖田の態度に戸惑いを見せるが、やがて店の奥へと姿を消した。
少しすると、何着かの袴を抱えて戻って来る。沖田と藤堂の前には、藍色、濃紺、焦げ茶、墨色の袴が置かれた。
「雪、こっちに来て選んでくれ」
藤堂に呼ばれ慌てて彼らの元に向かった雪は、目の前に並べられた袴に見入った。
色合は地味で別段目を引く物では無いが、その元となる生地が上等なものであると感じられる。
「どれも稽古や普段遣いに向いてるかと」
「うーん、あまりこういったものにこだわりないので何とも……。強いて選ぶなら、藍色ですかね」
「いいんじゃない。決め手はあるの?」
「この首の傷を付けた浪士が着ていた色なので」
しんと店内が静まり返る。得も言われぬ張り詰めた空気が辺りを漂っている。
沖田と藤堂だけではなく、年配の店員ですら目を瞬かせて雪を見ていた。
きょとんと小首を傾げる雪を見た沖田は深い溜息を吐き、藤堂はがっくりと項垂れてしまう。
「なんつー理由だよ」
「ほんと。鈍感なのか無頓着なのか……」
呆れた様子の二人を見て、店員は困ったように苦笑いを漏らした。
沖田が扉を開け先に中に入って行く。その後に藤堂が続き、後を追って雪も呉服屋の中へと入る。
ふんわりと乾いた木の香りと、染めた布の匂いが鼻を擽った。初めての感覚に雪は思わず入ってすぐに立ち止まった。
店内は畳敷きで、天井まで積まれた棚に色とりどりの反物が整然と並んでいる。
奥の帳場では、年配の店員が黙々と帳簿をつけており、その手前には袴や着物が折りたたまれて山のように置かれていた。
「あのー、すみませーん」
「はいはい。何かご入用で?」
沖田が声を掛けると、奥の帳場にいた年配の店員が腰を低くしながら出てくる。
辺り一面を埋め尽くす反物に目を奪われる雪をよそに、沖田と藤堂は年配の店員の元へと向かった。
「あそこの彼女に合う袴をいくつか見せてもらえませんか?」
「袴、ですかい? 着物ではなく?」
「はい、袴を」
年配の店員には、年頃の女子に男物の袴を用意しようとする沖田達が怪しげに見えるのだろう。
警戒する年配の店員を相手に沖田は無駄な会話は省き、無言の圧力で押し返す。
年配の店主はそんな沖田の態度に戸惑いを見せるが、やがて店の奥へと姿を消した。
少しすると、何着かの袴を抱えて戻って来る。沖田と藤堂の前には、藍色、濃紺、焦げ茶、墨色の袴が置かれた。
「雪、こっちに来て選んでくれ」
藤堂に呼ばれ慌てて彼らの元に向かった雪は、目の前に並べられた袴に見入った。
色合は地味で別段目を引く物では無いが、その元となる生地が上等なものであると感じられる。
「どれも稽古や普段遣いに向いてるかと」
「うーん、あまりこういったものにこだわりないので何とも……。強いて選ぶなら、藍色ですかね」
「いいんじゃない。決め手はあるの?」
「この首の傷を付けた浪士が着ていた色なので」
しんと店内が静まり返る。得も言われぬ張り詰めた空気が辺りを漂っている。
沖田と藤堂だけではなく、年配の店員ですら目を瞬かせて雪を見ていた。
きょとんと小首を傾げる雪を見た沖田は深い溜息を吐き、藤堂はがっくりと項垂れてしまう。
「なんつー理由だよ」
「ほんと。鈍感なのか無頓着なのか……」
呆れた様子の二人を見て、店員は困ったように苦笑いを漏らした。



