表紙を見てみると、『日本昔ばなし 浦島太郎』と書かれている。
古くから幼子に読み聞かせる一般的な童話だ。
何度も読み返したのか、頁の至る所が擦り切れて古びている。恐らく、これもまた山南の私物だろう。
「浦島太郎は、亀を助けたことで龍宮城に招かれる。そこで乙姫から亀を助けたお礼として玉手箱を受け取り、地上へ戻ると数百年が過ぎていた。というのが従来の浦島太郎の話です、が」
「もったいぶらず話してくれ」
ここまでの話であれば、土方の知る浦島太郎と大差ない。
多くの人が山崎が語った内容を浦島太郎として認識しているだろう。
「これを踏まえて、違う視点で考えた解釈があるのです。時間とは、皆平等に進みますよね」
「当たり前だろう」
「それが覆される事例があるとしたら」
逆浦島太郎。
竜宮城で数日過ごし、地上に戻ると数百年の未来になっており、太郎は老人になった。これは一般的な浦島太郎の概要である。
しかし、ある介錯がこの世には存在していた。
浦島太郎が招かれた竜宮城は、未来の世界であるというもの。
相対性理論によれば、光速に近い速度で移動する物体の時間は、止まっている観測者から見て遅くなることが証明されている。
この光速に近い速度で移動する物体に近しいものと言えば、浦島太郎が助けた亀。
遅い印象の強い亀だが、海の中ではそれは覆る。四つのヒレで器用に水中を泳ぐ姿は、地上での亀とは真逆の印象を与えるだろう。
つまり、浦島太郎は気づかぬ内に光速で移動したことで、数日しか過ごしていないはずが地上では数倍の時間が経っているため数百年が過ぎていたということだ。
「雪殿は、何らかの理由で時間を超える速度で移動し、時空を越えたのやもしれません」
「………っ、ま、待て。流石に理解が追いつかん」
眉間を抑えて土方は唸る。山崎が語った話は、流石に想像を超える超常現象過ぎて理解が追いつかなかった。
「当然の反応でしょう。俺も初めは意味が分かりませんでした。しかし、山南殿は気づいていたんです」
山南だったから、知ってしまったのだろうか。
もしも彼の立場に土方がいたとしたら、きっと雪の体が透けて見える理由と浦島太郎の話を関連付けられるはずがない。
運命が引き合わせた結果が、今になって牙を向いた。
「雪殿……身体の成長が止まってはいませんか?」
古くから幼子に読み聞かせる一般的な童話だ。
何度も読み返したのか、頁の至る所が擦り切れて古びている。恐らく、これもまた山南の私物だろう。
「浦島太郎は、亀を助けたことで龍宮城に招かれる。そこで乙姫から亀を助けたお礼として玉手箱を受け取り、地上へ戻ると数百年が過ぎていた。というのが従来の浦島太郎の話です、が」
「もったいぶらず話してくれ」
ここまでの話であれば、土方の知る浦島太郎と大差ない。
多くの人が山崎が語った内容を浦島太郎として認識しているだろう。
「これを踏まえて、違う視点で考えた解釈があるのです。時間とは、皆平等に進みますよね」
「当たり前だろう」
「それが覆される事例があるとしたら」
逆浦島太郎。
竜宮城で数日過ごし、地上に戻ると数百年の未来になっており、太郎は老人になった。これは一般的な浦島太郎の概要である。
しかし、ある介錯がこの世には存在していた。
浦島太郎が招かれた竜宮城は、未来の世界であるというもの。
相対性理論によれば、光速に近い速度で移動する物体の時間は、止まっている観測者から見て遅くなることが証明されている。
この光速に近い速度で移動する物体に近しいものと言えば、浦島太郎が助けた亀。
遅い印象の強い亀だが、海の中ではそれは覆る。四つのヒレで器用に水中を泳ぐ姿は、地上での亀とは真逆の印象を与えるだろう。
つまり、浦島太郎は気づかぬ内に光速で移動したことで、数日しか過ごしていないはずが地上では数倍の時間が経っているため数百年が過ぎていたということだ。
「雪殿は、何らかの理由で時間を超える速度で移動し、時空を越えたのやもしれません」
「………っ、ま、待て。流石に理解が追いつかん」
眉間を抑えて土方は唸る。山崎が語った話は、流石に想像を超える超常現象過ぎて理解が追いつかなかった。
「当然の反応でしょう。俺も初めは意味が分かりませんでした。しかし、山南殿は気づいていたんです」
山南だったから、知ってしまったのだろうか。
もしも彼の立場に土方がいたとしたら、きっと雪の体が透けて見える理由と浦島太郎の話を関連付けられるはずがない。
運命が引き合わせた結果が、今になって牙を向いた。
「雪殿……身体の成長が止まってはいませんか?」



