「私達、一緒にいたからここまで来れたのかもね」
「……雪」
徐々に速度が落ちていき、最後には道の真ん中で立ち止まる。
手は引かれたまま、俯いた雪は包を強く抱き寄せた。
「ねぇ、総司君」
「何」
「今から、おかしなことを聞くけどいい?」
「……いいよ」
兄弟揃っておかしい自覚があるのなら、どうしてわざわざ問うのだろう。
今では過去になってしまったが、今は亡き仲間が似たような言葉を口にした。
あの時は、沖田の図星を的確に突く問で、互いに同じ想いを持っているのだと確認したかったのかもしれない。
「私が、皆と違う所から来たって言ったら……どうする?」
けれど、雪が口にした問は、兄が沖田に投げ掛けたものとは遠くかけ離れている。
「どういう意味? 違う所から来たって、皆そうだろう?」
「ううん、違う。私は皆とは違う」
意味が分からない。一体何を言い出したんだこの子は。
沖田には雪の言葉の意味が全く持って理解できず、ただ聞き返すことしかできなかった。
声音に微かな怒りと疑念が混ざろうと、雪は何処か呆けた態度を崩さない。
「ただ出身地が違うわけじゃないの。私は、この時代の人間じゃない」
何処からともなく吹いた風が雪の長い黒髪を揺らした。
桜色の結い紐がやけに浮いて見えて、華奢な身体が随分と薄く見えた。
「って、言ったらどんな反応するかなって。意味分かんないよね。……ごめん、変なこと言っちゃった」
「本当なの?」
「え?」
「その話、この時代の人間じゃないって本当なの?」
一歩大きく踏み出した沖田は、光のない目で雪を見下ろした。
気づかぬ内に顔を出していた太陽を背に、逆光が沖田の顔を隠す。
だから、雪には声音から彼の感情を読み取るしか無かった。
「それとも、冗談?」
「……っ………」
「冗談だったら、おもしろくない。ちゃんと話して」
頬に触れた手は、滑らせるように白い肌を撫でた。そして無理矢理顔を上げる。
沖田はじっと雪の目に見入った。腹の底を読み解くような、全てを見透かそうとする目で。
「ごめん、なさい。やっぱり、言えない」
「どうして。君から言い出したんだよ」
「分かってる。でも、無理なの。……分かんない、分かんないよ」
自分は何処で生まれたのか。この時代なのか、遠い未来なのか。
もしかせずとも、どちらでもないのか。自分はどの世界でも存在していない、存在してはいけないとしたら。
自分自身なんてもう形すら見えなくなってしまう。
見失うのは簡単だ。自分を壊すのも、失うのも、簡単なことだった。



